それでも、調査結果に不満があった。2017年12月12日、遺族は県知事に再調査を申し出た。翌2018年2月28日、県知事のもとに「県いじめ調査検証委員会」(再調査委)が設置された。指導体制の問題、特にいじめ防止対策推進法では対象外の「教員によるいじめに類する行為」も調査した。
「(当初の)調査委でも、なぜ教職員については調査されないのか、と言ったんですが、法律による調査だから、生徒間のみしか調査できない、と告げられました。でも、教職員にも疑いがあるのであれば、そこを含めて調査すべきです」(同前)
今後も遺族は話し合いを続けていく予定
再調査の報告が出された後、当時の校長は管理監督責任を問われ、減給10分の1(1ヶ月)の懲戒処分となった。
「県教委は生徒間のいじめは認めています。しかし、校長が処分されたのは、いじめのアンケート調査をしていなかったからでした。それに『教員によるいじめに類する行為』は否定しました。そのため、教員の処分はなかったんです。しかも、懲戒処分の対象に『教員によるいじめに類する行為』はないのです。体罰やわいせつ行為に対する懲戒はあるのに、おかしいと思いました」(同前)
その後、再調査報告書の再発防止の提言実現のため、県教委との話し合いの場を求めたが、実現しなかった。そのため、裁判を含む法的な手段を検討し、調停での話し合いを申し立てた。
「この時点では裁判することを選択肢に入れていました。ただし、まずは県教委の考えを知りたいと思ったんです。最初に求めたのは損害賠償でしたが、県側は、“国賠法(国家賠償法)上の違法性はなく、賠償請求には応じない。それ以外のことであれば話し合いの余地がある”という趣旨のことを言ってきました。そのため、一度は金銭的なものをなしに話し合うことを決め、話し合いのたびに、提案していきました」(同前)
3月26日、海都さんの母親は、いじめに関連する文庫に納める書籍66冊を高校に寄贈した。今後も遺族は話し合いを続けていく予定だ。