2016年7月26日午前1時、山口県の県立高校2年生の男子高校生(享年17)がJR山陽本線の櫛ケ浜駅で貨物列車にはねられ、死亡した。階段には、バッグとスマートフォンが置かれ、メモアプリに「ありがとう」など感謝の言葉がつづられたメモが遺されていた。

 この件をめぐり、2022年3月18日、山口簡易裁判所で県と遺族側の間で調停が成立した。再発防止のための協定書を結んだ。遺族側は「息子の自殺についての責任追及として裁判も考えましたが、協定を結ぶことは再発防止の意味があると思いました」としている。

海都さんは、17歳で自らの命を絶った ©渋井哲也

100%納得しているわけではない

 県と遺族との間の協定書によると、

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1)「県いじめ調査検証委員会」(再調査委)の報告書にある提言の具体的な進捗状況や成果を遺族側に報告

2)再発防止に向けての対策を、相談体制、自殺予防教育の推進などの継続

3)関係した教職員が命日前後に、追慕・追悼のための機会を設ける

4)記念樹(銘板を含む)を設置

5)いじめ問題に関連した文庫の設置

6)風化防止のために必要な措置

 など10項目。

「今までの県との関係や調査委員会の対応は、不信感を抱くきっかけになりました。和解が成立したからといって、これまでのことが、『なかったこと』にはなりません。100%納得しているわけではありません。ですが、これからの県や県教委の取り組みに期待し、調停を終えました」(母親)

 遺族は和解成立後、男子高校生の名前を「海都」と公表した。碑には「かいと」と刻まれる予定だ。

「教室締め出し」や「役割押し付け」がいじめの該当項目に

 海都さんに何が起きたのか。2018年に県知事のもとに設置された「県いじめ調査検証委員会」(再調査委)の報告書によると、18項目が「いじめに該当」との判断になった。例えば、「言葉でのからかい」としては、軽い口調で体型のことをからかわれたり、女子生徒から「キモい」と言われることがあった。テニス部の部員から「お前、マジ、死ねや!」と言われたこともある。

「教室締め出し」としては、海都さんともう一人の男子生徒が教室に入れないようにされた。