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いまでは田園都市線全駅の中でも乗降客数は第5位

 田園都市線は1968年に長津田駅からさらに延伸し、開業当初は1面1線だった構内も拡張。2面4線という規模の大きなターミナルに生まれ変わった。その後は沿線の開発が進んだこともあってお客の数を飛躍的に伸ばしていき、いまでは田園都市線全駅の中でも乗降客数は第5位。横浜線との乗り換えターミナルという意味合いが、いちばん大きいのだろう。

 ただ、どうしたって長津田駅にとって田園都市線は新参者だ。最初に開業した横浜線の駅が古くからの市街地に近い南側にあるのはそうした歴史的経緯の表れといっていい。だから立派な駅舎が南口にはあるはず……と思ってみたら、まったく期待を裏切られた。

 
 

 長津田駅の南口には駅舎らしい駅舎もなく、駅前広場もあちこちで工事中。再開発と言えば聞こえはいいが、北口と比べるとなんとなくうらぶれている。

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 駅前から橋上の駅舎に向かうには、屋根の着いた通路を歩いて階段へ。あれだけの乗降客数を抱える駅とはとても思えない、昭和というか国鉄的というか、そんな雰囲気すら漂っている。

 

 はじめて来た人は、どちらがもともとの正面なのかよくわからなくなってしまうに違いない。開発がいち早く進んだのが東急側の北口というのは、やっぱりさすがの東急なのである。

渋谷、青山、永田町、横浜…どれも想像以上に近い「長津田」

 なお、横浜線は1988年に快速の運転をはじめているが、そのときには長津田駅は通過していた。同じく東急との乗り換え駅である菊名駅も通過していて、都心部への輸送においてライバルであった東急にお客が流れるのを嫌がったのだろうか。それとも、たいして需要がないと踏んでいたからなのか。

 だがさすがに住民や東急の利用者には不満がたまる。最終的にはデモまで行われるようになって、JRさんも折れて1994年から快速が停まるようになった(菊名駅は2006年まで快速が通過していた)。このあたりからも、JRさんがあまり長津田を重視していなかったのであろうことがうかがい知れる。

 ともあれ、駅周辺の開発はこれから一気に進むことになるのだろう。

 長津田駅から田園都市線に乗れば渋谷駅まで約30分。青山や永田町、大手町といった東京のド真ん中まで行っても1時間はかからない。さらに、横浜線の快速に乗ったら20分ほどで横浜へ。新幹線に乗り継げる新横浜駅だったら15分もかからない。休日のお買いものをしたければ、5分もすれば町田駅だ。なんとなく、長津田というとはるか遠くにあるようなイメージを抱いてしまうが、想像以上に都心に近く便利な町なのだ。

 

 駅の南口、旧大山街道の道筋の丘の上には大石神社というお社がある。桜の名所で長津田の鎮守、ご神体が石というちょっと変わったお社で、在原業平(百人一首で聞いたことがあります)が祀られているなどといった言い伝えもあるそうだ。街道から境内に続く坂道の途中には石灯籠の常夜燈。夜通し火を灯して大山街道を歩く人びとを照らしていたのだろう。

写真=鼠入昌史

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