ずいぶん昔、関西に住んでいた頃に東京までクルマで遊びに行った知人がことあるごとに「ニーヨンロク、ニーヨンロク」と連呼していた。永田町から赤坂見附、青山、表参道、渋谷ときて、山手線の外に出てからも三軒茶屋や二子玉川といった知名度バツグンの町を走る国道246号のことだ。

 きっと彼は、いかにも東京らしいこの道を通ったことを自慢したくてたまらなかったのだろう。東京まで東名高速道路で行って早めに高速から降りると、だいたい最初に通る一般道は246号だから別にスゴいことでもなんでもないのだが、まあ確かにこの道はザ・東京である。

 その国道246号、古くは「大山街道」「矢倉沢往還」などといった。丹沢山地の大山詣での道、そして東海道の裏往還(つまり抜け道みたいなものだ)が江戸時代までのニーヨンロクの役割だった。だから、サンチャやニコタマはともかく、いまでいう神奈川県内を北東から南西に向かって斜めに貫く。海老名駅や本厚木駅を訪れたときも、この大山街道・ニーヨンロクの呪縛に見舞われたが、今回やってきた長津田駅もまた、ニーヨンロクの町である。

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「長津田」には何がある?

 ニーヨンロクは、渋谷から先の郊外において、東急田園都市線とずっと並行して走る。多摩川を渡り、さらに南西へ。田園都市線は溝の口駅でJR南武線とぶつかって、あざみ野駅では横浜市営地下鉄ブルーラインと接続。そしてその次にぶつかるのが、長津田駅でのJR横浜線だ。

 

 地下鉄半蔵門線に乗り入れている田園都市線の列車は、夜になると結構な頻度で「長津田行き」の列車が走る。田園都市線の終点は中央林間駅だから、それより手前の長津田止まりの列車もけっこうたくさん走っているというわけだ。

 さらに、大井町駅から出ている東急大井町線も長津田行きの急行が走り、つまりは長津田駅は都心部からの“終着駅”のひとつになっている。だから知名度はなかなかのものだが、例のごとくいったいどんな駅なのか、何があるのかは多くの人が知るところではなかろう。

今回の路線図。半蔵門線に乗り入れている田園都市線の列車は、夜になると結構な頻度で「長津田行き」の列車が走る

 ……と、そんなわけで田園都市線に乗ってはるばる長津田駅までやってきた。

 長津田駅の手前で東からやってくる横浜線の線路と寄り添い、仲良くホームまで並べている。このあたりは、溝の口駅での南武線とは十字にクロスしているのと大違い。十字にクロスしていると乗り換えもなんだかめんどくさい気がして、もう少しお互い仲良くしてくれればいいのにと思ってしまうのだが、長津田駅までやってくればその問題は解消されるのだ。

 

 

 

 駅のホームは地上にあって、階段を登って橋上のコンコースへ。東急線の改札口の先には、いくつもお店が並んでいて、なんだか賑やかな雰囲気だ。夕方になると、横浜線と東急線を乗り継ぐお客で混雑するのだろう。