お笑い賞レースのファイナリスト経験はない。わかりやすくテレビでブレイクしたわけでもない。なのに、平成ノブシコブシ・吉村崇は、今やテレビに欠かすことができない存在だ。
この春からは、『バイキングMORE』の後番組『ポップUP!』の金曜パーソナリティーを担当。さらには、相方・徳井健太が『敗北からの芸人論』を上梓するなど、ここにきて平成ノブシコブシのプレゼンスは上昇カーブを描いている。
わかりやすい結果がなくても、吉村崇は、平成ノブシコブシは、サバイブし続ける。どうすれば最前線にいられるのか? 自らを「トップアマチュア」と自虐的に評する芸人界屈指のユーティリティプレイヤーに、虎の巻はあるのか聞いた――。(全3回の2回目/#3に続く)
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相方・徳井が大量の食用幼虫を食べてブレイク
――賞レースでは結果を残すことは叶わなかった。しかし、2010年に『(株)世界衝撃映像社』の「ホームステイin部族」ロケで、相方・徳井さんのキャラクターが話題を呼び、本格的なブレイクへとつながります。
吉村 『(株)世界衝撃映像社』は、大きなターニングポイントでしたね。撮れ高がなかったら、日本に帰ってこられないくらいの気持ちで臨んでいました。特に、特番のインドネシアロケは印象深いです。僕は、ポリシーとしてテレビ業界に自分のわがままは言わないようにしている。テレビの奴隷でいいと思っているんです。その唯一の例外、わがままがインドネシアロケ。
とある部族の村を訪れた際、食用の幼虫が1匹しかいなかったんですよ。ディレクターから、「嫌がりながら吉村さんが食べて下さい。ただ、1匹しかいないから大事に食べてください」って言われたんですけど、1匹は絵的に弱すぎるよ!って(笑)。大量の幼虫が目の前にあって、リアクションを取りたい……ですから、なんとか部族の人たちに「もっと幼虫を用意してください」って懇願しました。
そしたら奇跡的に大量に幼虫を発見してくれて。それで、徳井がノーリアクションでスナック菓子のように幼虫を食べるというシーンにつながった。1匹だったら僕らはブレイクしていないですよ。
――部族が幼虫をたくさん集めてくれたから、ノブコブはブレイクした(笑)。
吉村 ホント、そう思います。テレビの奴隷である自分が、あそこで駄々をこねたことが、結果的に良かった。人生を変えた駄々だったと思う。部族の人たちも、「お前らこんなに食べてくれるのか! 珍しいな!」みたいになって。ランナーズハイじゃないけど、部族ハイみたいになって必死になってかき集めてくれて。必死な気持ちが、功を奏すんだなって痛感しましたね。