お笑い賞レースのファイナリスト経験はない。わかりやすくテレビでブレイクしたわけでもない。なのに、平成ノブシコブシ・吉村崇は、今やテレビに欠かすことができない存在だ。
自らを「トップアマチュア」と自虐的に評するが、麒麟・川島明をして、「最高のチェイサー」と言わしめる、お笑い界屈指のユーティリティプレイヤー。その一方で、“天下取り”を公言し、ときにふんどし一丁で踊る破天荒さを隠そうとしない。
“やりて”か“うつけ”か――。吉村キングダムが掲げる天下取りとは何を意味するのか? なぜ途方もないことを口にするのか? 「勢いとカンだけ」。そう笑い飛ばす真意を聞いた。(全3回の3回目/最初から読む)
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ビッグマウスが絶滅危惧種になるのはおかしい
――吉村さんは、お笑い界の“天下取り”を明言されています。昨今、なかなかそういったことを口にする人が減っている中で、なぜあえて掲げようと?
吉村 もっと言っていくべきだと思うんですよ。お笑い界だけじゃなくて、日本全体からビッグマウスが少なくなりましたよね。わかるんですよ、天下を取れなかったとき、恥ずかしい発言になるというのは。たしかに、気が付いたら天下を取っていたというのが一番かっこいいと思う。でも、恥ずかしいとか周りから叩かれるとか、そんな理由で言うのを控えて、自然に叩かれない選択肢を選ぶのはどうなのかなと。ビッグマウスが絶滅危惧種になるんじゃなくて、本当はもっと増えていかなきゃおかしい。
――一方で、天下を取らなくても、動画配信などで人気を集めたり、お金を稼げる時代でもあります。そういった時代の変化は、どう映っているんですか?
吉村 アプローチが増えたわけですから、良いことだとは思うんですよ。選択肢が増えるってことは、ご飯も食べられるようになるし、安心感も生まれやすくなるだろうし。ただ、それとは別で、「天下とは何か?」ということを考えたときに、資産額や貯金額の話じゃないでしょうと。
家康も秀吉も天下人として大成したけど、その当時一番のお金持ちかどうかはわからない。やっぱり天下を取った景色って、天下を取らないとわかんないと思うんですよ。 その景色を、僕は見たい(笑)。ひょっとしたら家康も、天下を取った後も楽屋みたいなところで、仲の良い家臣たちと話している瞬間が一番楽しかったかもしれない。天下を取った先を知りたい――その気持ちが天下取りを目指したいと思う根源にありますね。