累計10万部突破の大ベストセラーとなったエッセイ集第1弾『僕の人生には事件が起きない』に続き、2年ぶりの第2弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』を刊行したお笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さん。なぜ2作目を書くことになったのか。「佃煮」と表現するご自身の文章へのこだわりについてもお聞きしました。(全2回の1回目。後編を読む)
乗り気ではなかった連載第2弾も大人気
――10万部を突破したエッセイ集第1弾に続き、第2弾のエッセイ集が発売になりました。「小説新潮」でも大人気の連載ですが、今回もやはり岩井さんは乗り気ではなかったそうですね。
岩井勇気(以下、岩井) たくさんの方に読んでいただけるのは嬉しいですが、第1弾は、たまたま売れただけなんです。出版社は「10万部突破の大ヒット作」なんて言っていますが、第1弾の初版、たった6000冊ですよ。絶対売れないと甘く見積もっていましたよね。
しかも、第1弾の発売時に開催したサイン即売会なんて、先着順でチケット配っていたんですよ。全然ファンがいないと思っているだろう、ってビックリしました(笑)。それだけ見くびっていたくせに、10万部売れたら手のひら返しで「第2弾に向けた連載はいつからにしますか?」と聞いてきて、そんな出版社の企みに乗るのイヤですよ(笑)。
そもそも第1弾は僕の文章が面白いから売れたわけでは絶対にないし、執筆だけで暮らしていけるほどお金も全然入ってこないので、「どうでもいい日常を書くならいいけど、面白くなくて売れなくても俺のせいじゃないよ」と、そこは強調して書き始めました。
漫画はエンターテイメントだけど
――でも実際に10万部売れているということは、それだけ面白いと思ってくださる方がいるからです。周囲の方からも「面白い」と言われますよね。
岩井 そりゃ言われますけど、でも本当に面白いと思って言っているかどうかなんてわかりませんよ。
今マンガの原作も手がけているんですけど、マンガのほうがよっぽど面白いと思います。マンガを嫌いな人ってあまりいないし、マンガって完全に「エンターテイメント」じゃないですか。でも小説やエッセイって、マンガに比べると娯楽とは言い切れないし、そもそもそこまで需要があるのかもわからない。出版社にしても、面白くなくても売れればいいという判断で出版を決めたのだと思います。
――第1弾の前書きで「文章など全く書いたことがない」と書かれていましたが、作文なども苦手だったのですか?
岩井 作文も全然書けませんでした。だいたい、ネタとTwitter以外の文章を書こうと思ったこともなかったし、自分で文章がうまいなんて思ったこともないです。澤部のほうがよほどたくさん本を読んでいるし、文章をつくるのもうまいと思いますよ。着眼点は僕のほうがあると思いますけど。