累計10万部突破の大ベストセラーとなったエッセイ集第1弾『僕の人生には事件が起きない』に続き、2年ぶりの第2弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』を刊行したお笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さん。小説とエッセイの違いや、「小説家」に対する思いなどをお聞きしました。(全2回の2回目。前編を読む)
第2弾は「誰も僕のことなんか知らない」という気持ちで
――エッセイ集第1弾では、タイトル通り『僕の人生には事件が起きない』という「平々凡々」な日常を書かれていますが、第2弾ではいきなり「喉に刺さった魚の骨が取れない」という「大事件」から始まります。
岩井勇気(以下、岩井) ただ魚の骨が喉に刺さっただけなんで、全然事件じゃないですよ。「救急車で運ばれた」というなら大事件ですが、飲みに行って「喉に魚の骨が刺さって取れないから、俺先帰るわ」と帰宅し、翌朝もまだ取れていない……って、これ、Yahoo!ニュースになりますか? 事件でも何でもないですよね(笑)。
――自分にとってはすごいことでも、人にとってはそれほどではないということでしょうか……。
岩井 というか僕、自分に起こることが大事件、みたいに言うのが好きではないんです。第1弾は、一応「芸人・岩井勇気」として書いたんですけど、「ご存じあのハライチ・岩井が」みたいに書くのがすごい恥ずかしくて、第2弾はさらに「誰も僕のことなんか知らない」という気持ちで書きました。
だって、「ご存じ」と書いてあるのに知らない人が読んだら「知らないよ、お前のことなんか。気持ち悪いな!」と思いますよ、絶対。なので、第2弾では「お笑い芸人ハライチ・岩井勇気」の日常ではなく、「35歳・独身・一人暮らし男性」の日常にこだわって書きました。第1弾では、「職業・お笑い芸人」というのを明かしていますが、第2弾では「仕事」が芸人とは書いていません。あくまで、「35歳の一人暮らしの独身男性」という情報から得られる人物像からはみ出さずに書いたつもりです。