ハライチの岩井勇気さんが「誰も僕のことなんか知らない」という気持ちでつづったエッセイ第2弾、『どうやら僕の日常生活はまちがっている』(新潮社)。「35歳・独身・一人暮らし男性」の日常を描いた同書より、「ダイエット」をご紹介します。(全2回の1回目。後編を読む)

◆◆◆

「あまり食べないダイエット」こそ真理

 少し前までダイエットをしていた。太っているわけではなかったが痩せたかったのだ。30歳を超えると世の中の男の多くは、腹がたるみ出し、顔が丸くなる。結婚などしていればなおさら。“幸せ太り”と言えば聞こえはいいが、実際は太ること自体に幸せなどは無く、結婚生活で大幅に加算された幸せを、太ることで減らしている。なので日常生活で太っていくことは“怠惰”でしかないと思っている。僕はそんな怠惰な流れに逆らう思いから、ダイエットを始めたのだ。

ADVERTISEMENT

 

 実行したのは、とにかく1日の摂取カロリーを下げるというダイエット。1日で体が消費するカロリーに対して、摂取カロリーが下回れば自ずと痩せるというシンプルなダイエットである。つまり、あまり食べなければいい。

 とは言え人はこれがなかなかできない。「食べないだけのダイエットはリバウンドする」だの「食事制限は体に良くない」だの、それらしく否定的な意見を並べては「結局食べながら痩せたほうがいい!」などと自分に言い訳をして、実行しないのだ。そうやって『朝カレーダイエット』や『ビターチョコダイエット』といった馬鹿みたいなダイエットにたどり着く。大概、食べ物の名前がついたダイエットは大嘘だ。それは総じてダイエットでもなんでもなく「ダイエットしてるから大丈夫!」と思うためだけの『気やすめ生活』である。よって、僕は『あまり食べないダイエット』を推奨する。これこそダイエットの真理だ。

沖縄料理の誘いを受けて…

 ダイエット開始から1ヶ月で早くも5キロ痩せるという結果が出始めた頃、友達から食事の誘いがあった。ダイエット中ではあったが、順調に痩せているし、参加しても調子に乗って食べ過ぎない自信はあったので、食事に行くことにした。店は沖縄料理店。沖縄料理はさっぱりしていて割とヘルシーなメニューが多いので僕にとっては好都合だ。店に着くと友達3人が席で待っていた。

 

 友達と多少のお酒を飲みながらテーブルの料理を摘(つま)んでいると、その中に沖縄のグルクンという魚を焼いたものがあった。かなり骨ばった魚である。僕は何気なくその身を箸で取り、食べた。すると食べた身の中に骨があることがわかった。しかし僕は頬張った魚の身に骨がある時に、口の中から骨を出す行為があまり好きではない。なぜなら、その行為はおばあちゃんがはっさくを食べる時に、一度はっさくを一房口の中に入れて噛んだ後、皮だけ口から出すアレと似ており、やっているのがおばあちゃんであろうが誰であろうが、この“はっさく吐き出し”は気持ちが悪いからだ。なので僕は大きすぎない骨であれば、歯で噛み砕いて飲み込むことにしている。