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 その時も、僕は大方骨を噛み砕いて飲み込んだ。するとその瞬間、喉の奥に激痛が走った。それと同時に僕は「かはっ! かはっ! うえぇっ!」と、むせ返った。グルクンの骨が喉に刺さったのだ。とっさに目の前の飲み物を飲む。しかし良くならず、食べ物と一緒に流しこもうと思い、テーブルにあったゴーヤチャンプルーをかき込んだ。すると骨の位置が変わったのか、刺さった直後よりは少しマシになった。だが、むせ返らなくなっただけで、痛みは続いている。唾を飲み込むだけでも喉の奥がかなり痛むのだ。

背に腹は代えられず唐揚げを丸飲みに

 友達も僕が悶絶していたのを見て心配し「何か大きめの食べ物を飲み込んだら治るんじゃない?」と唐揚げを差し出してきた。僕は何故かその時、ふと自分がダイエット中だということを思い出した。唐揚げは高カロリーでダイエットとは真逆の食べ物である。魚の骨が喉に刺さったせいで、今それを食べることを勧められている。

 しかし、背に腹は代えられない。僕は差し出された唐揚げを箸で取り、そのまま口に運び、半ば丸飲みした。悲しいことだ。ダイエット中、散々我慢していた高カロリーな食べ物を、痩せ切った後存分に味わおうと楽しみにしていたのに、こんな形で丸飲みさせられるのだ。人生で一番悲しい丸飲みである。悲しみの丸飲みである。心の中では泣きながらその唐揚げを丸飲みしたが、骨は取れなかった。丸飲み損だ。おばあちゃんの“はっさく吐き出し”を気持ち悪がらなければよかった。最悪である。

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 その後も喉の痛みは続いていたので、僕は携帯電話で魚の骨が喉に刺さった時の対処法を調べた。するとやはり「食べ物を飲み込むと取れる」とあったが、そこには「ご飯を多めに飲み込むと取れることがある」とも書かれていた。メニュー表を手に取り、何かご飯を使った料理がないか目を通す。すると『ジャンボおにぎり』というメニューがあった。このおにぎり、中身は沖縄で良く使われる油味噌らしい。油の味噌である。『油味噌を使ったジャンボおにぎり』など、ダイエット中の僕にとってみれば『カロリー』と言っているのと一緒だ。だがご飯を使ったものはそれしかないようなので注文し、しばらくするとその『ジャンボおにぎり』が届いた。