著者は「ノリボケ漫才」という独自のスタイルで一躍人気になったお笑いコンビ・ハライチのボケ担当。
1人で暮らすメゾネットの庭の木が突如朽ち果て、それまで幹や枝で遮られていた向こう側の墓地が丸見えになる。白いペンギンの作品だけが置かれた美術館の部屋で、係の男性と2人きりになってしまう。同窓会は嫌いなのに、その同窓会帰りの同級生に会うハメになる……。たとえばこのような生活の中に転がる違和感に、いちいち向き合い行動し、ときに鋭い牙を剥く。そんな日常を綴った初エッセイ集がヒット中だ。
「企画のきっかけは深夜のラジオ番組での、著者の語りに惹かれたことでした」(担当編集者の福島歩さん)
著者はそれまで原稿執筆の経験ゼロ。そうと知らずに依頼したが、原稿は上がってくる度に面白いものに。著者の取材対応の巧みさも手伝い、本の存在はファン以外にも広まっていった。
「編集でもっとも心を砕いたのはエピソードの並べ方でした。庭の草むしりや窓拭きなどにこだわる著者の生活感溢れる一面を最初に見せ、祝う気のない知人の誕生日パーティーに敢えて出向くといった著者の狂気が徐々に顔を出してくる流れにし、最後は澤部佑論で締めようと。澤部は売れっ子だが極めてファンが少ないなどと断ずる相方論の切れ味には、とくに反響がありました」(福島さん)
2019年9月発売。初版6000部。現在12刷6万4000部