日本と同様、いや、それ以上に苛酷な競争社会であり、同調圧力も強い韓国で、著者は会社勤めとイラスト仕事を兼業し、あくせくと働いてきた。だが、40歳になるのをきっかけに会社を辞め、〈必死に生きないようにしよう〉と決意する。その後の率直な気持ちを、とぼけた味わいの文章と絵で綴ったエッセイが好評だ。
「自己啓発本の逆張り、自己『不』啓発本を出したいと考えていたところに本書の存在を知り、翻訳出版に手を上げました」(担当編集者の畑下裕貴さん)
〈やる気とは自ら作り出すものであり、誰かに強要されて作り出すものでは絶対にない〉〈時間は、何かをしてこそ意味があるわけではない〉など、ハッとする指摘も多い。著者は男性だが、読者の6~7割は女性で、共感の度合いも深い。
「女性読者の多さは、東方神起のメンバー、ユンホの愛読書として話題になったので、当初はその影響かと思いました。しかし現在も高い水準で売れ続けていることを思うと、それだけではないのかなと。特徴的なのが読者ハガキの年齢層で、9割が20代から。今の20代は子供の頃からSNSが身近にあり、世間の理想や他人の幸せを強く意識してきた。SNSがない時代を知る世代より、人目を気にしているのでは。そこに本書の、他人を気にせず自分らしく生きるというメッセージが響いていると感じます」(畑下さん)
2020年1月発売。初版7000部。現在6刷6万部