『もしも1年後、この世にいないとしたら。』(清水研 著)文響社

 著者は精神腫瘍医(がん専門の精神科医・心療内科医)として国立がん研究センター中央病院を経て、現在がん研有明病院に勤務。

 若くしてスキルス胃がんを発症し、将来のために「今」を犠牲にする生き方を見つめ直した人や、大腸がんで人工肛門を付けたことで、苦手だった同僚の優しさを知り、職場の人間関係が変わった人。そうした、死を意識して変化する患者たちと接しながら、著者も「must」より「want」を大切にする生き方に目覚めていく。その心境を穏やかに記している。

「『人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話』(KADOKAWA)を読んで、がん患者さんの心に寄り添う著者の姿勢に惹かれて企画を立てました。私も母ががんになったのですが、今、がんと接することなく人生を終える人は少ないですよね。それなのに、患者の心の持ちようを書いた本は多いとはいえません。そうした本を出し、また、精神腫瘍医という職業の存在を周知したかったんです」(担当編集者の野本有莉さん)

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 読者には30代・40代の比較的若い世代も多い。

「コロナの影響でそう感じた方も多いと思いますが、今は健康でも、明日どうなるかはわかりません。がん患者に限らないそうした気持ちに応える内容が、若い方々にも響いたのではないでしょうか」(野本さん)

2019年10月発売。初版1万部。現在9刷7万8000部