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「家康も秀吉も天下人として大成したけど…」平成ノブシコブシ・吉村崇が“お笑い界の天下取り”にこだわり続けるワケ

平成ノブシコブシ・吉村崇さん #3

2022/04/17
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空元気でもいい、自らを鼓舞しないと

――喜劇王みたいなことを言いますね。

吉村 ははははは! お金を稼ぐことは大事だと思うんですけど、芸人である以上それだけじゃないと思うんですよ。昔は、天下を取る=お金を稼ぐ、有名になる……それが芸能界だったし、最短距離でわかりやすかった。今ってそれがすごくぼやけてしまっているからこそ、僕はそれが何なのか見てみたい。こういうと、みちょぱから「考え方が昭和」って言われるんで、お恥ずかしいところもあるんですけどね。 

 

――いやいや、このご時世、夢を語れる人って稀有な存在ですからすごいと思いますよ。

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吉村 何をおっしゃいますか。僕のような勢いとカンだけの人間は、せめてビッグマウスだけは忘れてはいけない。自らを鼓舞しないと。空元気でもいいんですよ。アクセルを強く踏み込んだら、ブゥオオオーン!って勢いの良い音が鳴るじゃないですか。ふかしでもいいから踏み込んだ方が、周りは「お、吉村は今日も良い音出してるな」って思ってくれる。僕みたいなバカは、バカなりの人生を謳歌するしかない。バカなのに賢い本を読むから、変な方向に行っちゃうんですよ。

男性版バーレスクの座長に

――気持ちの良い発言すぎます。吉村さんはコロナ禍前までは、ご自身が座長となって、バーレスクの男性版であるボーイレスクショーを定期開催していました。その姿は、たしかに一線を画す謳歌の仕方でした。

吉村 みんなが漫才やコントに精を出す中で、僕は裸にふんどし一丁で踊っていましたから。こんなバカいませんよ。でも、そんな姿を先輩方は面白がって、笑ってくれる。種目が違いすぎて、諸先輩方からしたら僕は脅威にならない(笑)。だから、かわいがってもらえているところがあると思います。

 

――脅威にならない……けだし名言ですね。

吉村 NSCに入ってくる中には、僕のように漫才もコントも上手くない奴が少なくない。その中で、盛り上げる力……わかりやすく言えば、打ち上げや飲み会で力を発揮するタイプもいる。ところが、そういうタイプの行き場が、芸人の数も増えましたし、テレビのニーズの変化などもあって、相対的に失われつつある。逆に、1年目、2年目で異常に漫才やコントが上手い子が増えているくらい。

「こいつらまだキャリアも浅いのにすごいな」と思う一方で、どこかレシピ通りだなと感じる寂しさもあるんですよ。レシピ通りにできない、僕のような芸人が集まって何かできないか――それで似たタイプの芸人連中を集めてボーイレスクを開催していたところもあるんですよね。純粋に楽しいんですよ。今はコロナによって休止中ですけど、落ち着いたら再び世界を目指したい気持ちもありますね。

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