『ピカルの定理』に抜擢され「一番苦しかった」
――そして、『ピカルの定理』のレギュラーにも抜擢されるという。
吉村 傍から見れば、売れっ子みたいに映るかもしれないですけど、個人的にはこの時期が一番苦しかったですね。 我慢の時期というか、スケジュールを見るとほとんど「仮」なんですよ。
――「仮」というのは、バラシ(キャンセル)になるかもしれないってことですか?
吉村 そうです、そうです。僕は、業界的には3番手とか4番手なんですよ。やっぱりスタッフさんは、旬の人を使いたいわけですよね。それがダメだったときの抑えとして、吉村崇のスケジュールを抑えておく。2012年くらいってスギちゃんが大ブレイクしていた年なんですけど、テレビ局はスギちゃんを使いたい。でも、彼は超多忙だから、その抑えで僕が行くみたいな(笑)。
でも、スギちゃんが大丈夫だったら、突然その日は暇になる。マネージャーに、「なんでバラシになったの?」って聞くことは日常茶飯事だったし、ピンチヒッターで登場するからスタッフさんのリアクションも異常に気になる。一回一回が正念場だから、細かいところまですべて気にしてしまう……地獄ですよ、ホント。
――本命じゃないから、変に調子に乗ることもできないですよね……。
吉村 ホント、そうなんですよ! ナンバー1へのご指名じゃないんですから(笑)。ナンバー2だったらまだいい。3番手がやってきて横柄な態度を取ろうものなら、総スカンになるわけですよ。その感覚って、今もありますからね。でも、ナンバー1であろうがナンバー2であろうが、ご指名をいただいたことは間違いない。ですから、その指名に対して一生懸命やるしかない。「仮」でもがむしゃらにやるしかないんです。
高級マンションに高級車…“NG なし男”の顛末
――麒麟の川島さんをして「酒だけではみんなすぐ倒れたりする。でも、そこに吉村さんっていうチェイサーが来ると、ライブがスムーズにいくんですよ」と言わしめた、その背景の一端を覗いたような気がします。
吉村 いつ戦力外通告を受けるかわからないんですから。一軍、二軍の試合関係ないですよ。いつまでも試合があると思っちゃいけません! こちとら代打だろうが、代走だろうが、そのときにできる全力をやるしかない。NGなしですよ。
――自らを鼓舞するため、高級マンションに住んだり、高級車を購入したり、あえて背水の陣を敷くのも、そういった理由からなんですか?
吉村 NGなしという意味ではそうかもしれないですね(笑)。僕が車を買ったときって、まだ免許を持ってなかったですから。かといって、車にあこがれがあったわけでもない。極楽とんぼの加藤(浩次)さんから、「お前はこれだよ」って言われて、そういうもんだと思って買っただけなんです。“NGなし男”の顛末ですよ、ものすごいローンが残っちゃって。でも、大好きな先輩が喜んでいるなら、僕は喜んで信長さまの草履を温めますよって。