「『サザエさん』のサブタイトルって本当に面白いんです。例えば1979年放送の『カツオがブラジャー』というタイトルとか、何事かと思いませんか? 日焼けのためにベランダで寝ていたカツオに洗濯物のブラジャーが降ってきて、日焼け跡が大変なことになるというおかしなお話なんですが、見事にその内容とマッチしています。他にも時代を映していたり、“珍品”があったり。調べれば調べるほど面白さが出てくるんです」

 楽しそうな表情で「サザエさん」への愛を語るのは、「サザエさんサブタイトル研究家」として「磯野家のお茶の間」という名前で発信を続ける秋葉氏(55)。1969年の放送開始から現在まで、アニメ「サザエさん」の話数はなんと8000話以上にのぼる。秋葉氏はそのサブタイトルのすべてを収集し、リストにした人物である。収集を始めてから5年、ついにリストを完成させた秋葉氏の「サザエさん」愛は、やはり想像を超えるものだった。

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――8000話以上のサブタイトル、コンプリートおめでとうございます。それにしてもどんなきっかけで「サザエさん」のサブタイトルを集めようと思ったのですか?

秋葉 ありがとうございます。「サザエさん」は子供の頃から好きでずっと録画していたので、家にVHSが300~400本ほどありました。それだけの数になると場所を取るし劣化も心配なので、2017年頃にDVDやブルーレイに移して保存しようと思い整理を始めたんです。ただ放送日が分からないものがあって、なかなか整理が進まない。そこで、放送日とサブタイトルの一覧リストが欲しくなって、自分でイチから作り始めたのがきっかけです。

1969年の放送開始から全ての回のタイトルが記録されたノート

「公式から出ている資料にはサブタイトルの一覧がないんです」

――オフィシャルのファンブックや資料集など、公式の各話リストは出ていないのですか?

秋葉 それが公式から出ている資料にはサブタイトルの一覧がないんです。量があまりに膨大ですし、そもそも需要がなかったのかもしれません(笑)。でも私は何かのデータを集めるのがもともと好きだったこともあり、集めていくうちに「サザエさん」のサブタイトルの面白さにどんどんハマってしまったんです。それで気づいたら暇さえあれば収集活動をするようになっていました。

フジテレビ公式ツイッターより

――「サザエさん」のサブタイトルにはどんな面白さがあるんでしょう。

秋葉 あのタイトル、世界観がけっこう独特ですよね。多いのは「カツオ、○○する」「○○のサザエ」といったように、キャラ名とその回のテーマになる行動や物をくっつけた形ですが、短い構文の中で様々な表現を試みているんです。短いフレーズで豊かな表現を目指しているのは、松尾芭蕉の俳句のようだと思いますね。