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変革期の天ぷら

 麻布十番の「てんぷら前平」はおいしくて楽しかったですね。御茶ノ水の山の上ホテルの「天ぷらと和食 山の上本店」の料理長まで務めて独立された方で、ちょっと熟成させたハタとか、芽ネギと小柱を巻いたものとか、ありきたりでないタネや出し方が素晴らしい。シメが天丼、天茶だけじゃなくて、混ぜご飯っていうのも斬新でした。

 野菜の天ぷらが楽しい「てんぷら 前平」

 天ぷらって今、変革期なんですよね。普通は海老から最初に揚げることが多かったのが、そのセオリーを崩すお店がでてきたり、懐紙に包んで手で渡したり。絶対に変わるはずがないと思っていたものが変わるのが面白かったですね。

編集部 確かにそれは感じます。同じ「天ぷらと和食 山の上」の支店なら、「天ぷら山の上 Ginza」もすごくいいですよ。野菜がおもしろいんですよ。例えば舞茸の芯だけの天ぷらとか、間引いた人参をゆっくり柔らかく、クネクネになるぐらい揚げたものとかね。あと、地方の天ぷらも話題になりましたよね。静岡の「てんぷら 成生」を筆頭に、名古屋の「にい留」や「くすのき」とか。くすのきは春に東京に移転するそうですね。

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懐紙で挟んで手渡される天ぷら。静岡「成生」

小石原 変革という意味ではとんかつもおもしろいですね。高田馬場の「とんかつひなた」でやっている、リブロースやしきんぼ、とんとろなどいろいろな部位の食べ比べコースは、「そうか! とんかつにそんな楽しみ方があったんだ!」と驚きました。とんかつといえばロースかヒレでしたから。

 中華では、広尾の「茶禅華(さぜんか)」が強いですね。スペシャリテの鳩が圧倒的で素晴らしい。シェフは中国料理を学んだあとに、六本木の日本料理「龍吟」にいたんですが、そこで学んだ素材の扱い方をきちんと生かしていると思います。

一軒家の隠れ家中華「茶禅華」

 カジュアルな店としては年末にオープンした「鉄板中華 シャンウェイ 神楽坂店」。青山の焼物料理店「楽記」の初代シェフを務めていた名田定広シェフが料理長で、青山「シャンウェイ」のフランチャイズといいながら、シャンウェイとは違ったテイストの料理、名田さんがお得意な焼き物なども出しています。

 あと、今年は海外から日本に進出してきた有名エスニック料理店が目立ちました。代々木にあるタイのイサーン料理の「ソムタムダー トウキョウ」や、銀座の香港海鮮料理の「喜記」などが出来て、現地の味をそのまま持ってきています。あと、骨董通りにオープンしたシンガポール料理の「楽堂」もおいしかった。

香港の味そのままの「喜記(へいげい)」
名物料理、海老のスパイスソルトフライ

 エスニックの流れでいえば、ベトナム料理では外苑前「アンディ(An Diコピー)」や代々木八幡の「ヨヨナム」も今年オープンしました。いわゆるおしゃれベトナムで人気を集めています。

「2017年はフレンチが当たり年」

(構成・山下久猛)