自動車に搭載されるセキュリティ技術の向上にともない、自動車盗難の被害は年々減少傾向にある。けれども一方で、盗難の手口は年々巧妙化し、盗まれるまでの時間も短縮されているのだという。
自動車の盗難は組織的な犯行である場合が多く、入念な下調べのもと実行に移される。盗難被害に遭っているのは高級車だけではなく、犯罪に利用するための「目立たない車」、すなわち普及価格帯の車種であることも少なくない。「普通の車」であっても安心はできないのだ。
それでは、盗難対策としてどのような方法が取れるのだろうか。引き続き、日本カーセキュリティ協会の代表を務め、カーセキュリティショップ「A2M」を経営する攪上智久氏に話を聞いた。
※本記事は自動車盗難の実情を紹介し、防犯意識の向上に寄与することを目的とするものであり、犯罪の助長を意図するものではありません。
ハンドルロックでも安心はできない
まず、比較的安価にできる対策としては、ハンドルロックやタイヤロックなど物理的な障壁を設ける方法がある。
「安いし簡単にできるので、メディアなんかだと落とし所の対策として紹介されることも多いのですが、ハンドルロックはグラインダーで切り落とされるケースも起きていますし、タイヤロックもランクルなどの車高の高い車だとそのまま走って外れてしまうんですよね」
窃盗グループからすると、一度狙いを定めてしまえば、こうしたロックを突破できる手口は用意できるわけである。それでも、何の対策をしないよりはリスクを減らせるかもしれない。
「車を盗まれている方の多くが無対策なんですよね。ハンドルロックにしても、少しは時間がかかるので、『だったら別の車にしておこう』と判断される可能性もあります」
その他、駐車場に監視カメラや人感センサー付きのライトを設置し、抑止力を高める方法も考えられる。もちろんこれも心理的にわずかな影響を及ぼすだけであるから、万全な対策とは言いがたい。