車両にGPSを設置し、追跡アプリなどを利用すれば車両を発見できる可能性は高まるが、盗難行為そのものを防止できるわけではない。なお、盗難率の高い車種の場合はとくに、純正のGPSユニットの位置を特定されてしまっていることも多く、追跡サービスを無効化されてしまう可能性もある。あくまで1つの対策として、その他の方法と組み合わせることが必要だ。
2000台以上に施工して盗難被害はゼロ
盗難防止対策として高い効果を期待できるのは、「社外セキュリティ」と呼ばれる装置である。ダッシュボード上に青いランプが点滅する機器が置かれているのを見かけたり、駐車場などでサイレンが鳴っているのを耳にしたりしたことがあるかもしれない。
社外セキュリティにもいくつか種類があるが、基本的には「車両制御と独立して動く監視・警報システム」と考えておけばよいだろう。各種センサーによって車両への衝撃や、ドアやトランクの開閉などを検知して警報を発したり、不正な操作によるエンジン始動を無効化したりする。
窓ガラスを割ったり、ドアをこじ開けたりといった物理的な突破方法はもちろん、スマートキーの電波を増幅する「リレーアタック」や、車両制御プログラムに介入する「CANインベーダー」といった手口に対しても有効である。車両の制御とは別にシステムが稼働しているため、純正のセキュリティが無効化されても機能を失うことがない。
ランドクルーザーをはじめ盗難率の高い車種のオーナーにとってはマストアイテムとされており、取材当日も攪上氏のショップには新型のランドクルーザーが2台、同じく新型LXが1台入庫していた。
攪上氏のショップは創業から16年、2000台以上の車に社外セキュリティを取り付けている。手がけた車両は盗難率の高い車種がほとんどだが、そのうち盗難被害に遭った車は1台もない。一体、どんなポイントが盗難防止効果につながっているのだろう。
「社外セキュリティは30年以上仕組みが変わっていないんですよね。純正では十数年前からイモビライザーが装着されたり、その後にはスマートキーが搭載されたりしてきましたが、どちらも半年ほどでそれを破る手口が出てきました。新しいものができても、デジタルのものは解析されてしまうのですが、社外セキュリティは基本的にアナログですので、一様に解析されることがないんです」
アナログと聞くと、かえって簡単に解除されてしまうようにも思えるが、決してそのようなことはない。窃盗犯がこれを解除しようと思えば、車両ごとにまったく異なるシステム本体の位置や、複雑な配線状況などを逐一把握しなければならず、膨大な時間が必要になる。