「あの親父セックスが好きなんだ」って言われるけど
――セックスは恥ずかしいものじゃないと。
林下 そう。みんなセックス=エロと考えすぎですよ。隠すものだと。学校でも性教育は全然してくれないし。今は増えているかもしれないですけど、俺らの頃なんておしべとめしべで例えられていたんですから。余計分かりづらいでしょ。
だから家庭で性教育をしていました。日本は性教育をしていないから、俺みたいに子どもが多いと「あの親父セックスが好きなんだ」って言われるしね。快楽でセックスをしていたわけではなくて狙ってしていましたからね。妊娠する可能性を100%否定したセックスに興味がないんです。
子どもには「卵巣があって子宮があって卵管を通って受精するんだよ。だから子どもができることはすごく神秘的なことなんだ」ってよく話していました。一番最初の嫁とは結婚10年で、子ども8人ですから。
いきなり男手一つで8人の子育てをすることに
――元々たくさん子どもが欲しいという気持ちがあったのでしょうか。
林下 別に子どもが好きでもなかったのですけど、できたら産んでもらうし、一生懸命育てようと思っていました。
結果的に大家族に恵まれてよかったですけど、子育て中によその子をみると、「なんだこのクソガキ」って思っていましたよ。学校でいくら評判が悪くても、うちの子と大笑いして遊んでいれば「別に悪い子じゃないし」って思うし、逆に学校でどれだけ優等生でもうちの子が「あいつ俺にこんな嫌なこと言うんだよね」っていうと大したことないガキだなって。
うちの子が基準になるんですよ。だから嫁が浮気して子どもができた時も、俺の子どもではないけど、俺の子どもとは兄弟になるじゃないですか。だから同じように可愛がりましたよ。
――最初のパートナーとは3度結婚と離婚をしていますよね。その理由は何でしょうか。
林下 1度目は俺よりも良い相手が見つかったってことで離婚しました。
――来るものは拒まず去るものは追わず、ということですか。
林下 当たり前ですよ。俺といるより幸せになれると思って離婚したいんだから、それは止めることができない。「そうか。幸せになれよ」って。
――子どもたちの親権は清志さんが取得していますよね。
林下 そこは元妻と話し合って決めました。最初は不安でしたよ。いきなり男手一つで8人の子どもを世話するわけですから。今だから言える話ですが、施設に電話したこともありました。でも、「子ども8人全員一緒は無理です」って言われて、それなら俺が育てるしかないなって、覚悟を決めて引き取りましたよ。
食事は人一倍気を使っていました。髪の毛から爪から全ては食からできているから。その季節に採れた野菜を食わせる。今は流通がしっかりして夏野菜が冬でも手に入るようになったでしょ。でも夏野菜っていうのは体の中に熱をこもらせないように毛穴を開く作用があるから、冬に食べたら体力がなくなるんですよ。子どもたちにはその季節に旬のものを食べさせるようにしていました。その方が安いしね。
写真=平松市聖/文藝春秋
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