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「ウータン」して仕送りをひねり出す…

 フィリピンは「世界最大の労働力輸出国家」とも言われる。国民の10人にひとり、およそ1000万人が海外で暮らす。建設作業員などの単純労働、高い英語力を活かした看護師などの医療関係、船員、それに女性はメイドなど、さまざまな分野で働いている。世界のグローバル化、労働力の流動化によって、その人数はコロナ禍以前はどんどん増えていたのだ。

 かれらOFW(Overseas Filipino Worker)からの送金額は、2020年の統計で約300億米ドル、なんと3兆円以上に上る。コロナ禍の影響によって20年ぶりの低水準となったのだが、それでもGDPのおよそ1割を稼ぎ出している。このお金によって本国にいる家族が消費をし、内需が押し上げられ、近年のフィリピン経済はなかなかの好調だった。

ネオン輝く歓楽街の中に、アジアの香りが強く漂う栄4丁目

 海外で苦労をしても、コロナで自分の生活がきつくても、国の親兄弟に仕送りをする。現代の日本人では、もうわからなくなってしまった感覚かもしれない。

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「教会や学校では、両親を大切にしなさい、ちゃんと面倒を見なさいと徹底的に教育をするんです」

 山田さんは言う。年金制度があまり充実していない国の「自助、共助」なのかもしれないが、それにしたって彼女たちは自分よりもなによりも家族を大切にしていて、どうしてそこまで、とも思う。ほかのキャストたちも呼んでもらって聞いたところ、みんな毎月8万円とか10万円を送金してるのだとか。

「ひと月に20万円、送ったことあるよ」

 なんて子には「わお」と感嘆の声が上がった。

 その送金も、2020年の秋あたりからは難しくなった。クリスマスのときはみんな相当に無理をして仕送りをひねり出したらしいが、

「それもウータン」

「貯金ぜんぜんない」

「500円玉貯金だけ。こーんな形の」

 よくドンキとかで売ってるやつだ。そうそう、とみんなが頷く。その500円玉貯金も、いっぱいになったら、

「エクスチェンジしてフィリピンに送る」

「結局、ぜーんぶフィリピン」

 と、またみんなで笑い転げる。その明るさにはなんだか救われる。出稼ぎの悲壮感をこちらに感じさせない。つらさを笑いで包みこむのがフィリピンだ。