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「ひと月に20万円、送ったことあるよ」コロナ禍で店が閉店…フィリピンへの仕送りに困ったパブ嬢たちの最終手段“ウータン”とは

「ひと月に20万円、送ったことあるよ」コロナ禍で店が閉店…フィリピンへの仕送りに困ったパブ嬢たちの最終手段“ウータン”とは

『ルポ コロナ禍の移民たち』より #2

2022/04/20
note

それでも日本で暮らしていきたい

「みんな借金あるから。若い子はとくに、借金まだいっぱい」

 ユラさんが言う。来日するお金をつくるため業者に借金をする女性は多い。そんなことをけらけら笑って言うけれど、異国で働き、借金を返しながら家族に仕送りをするのはなかなかたいへんだと思うのだ。

「それでも、日本におりたいから」

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 山田さんがしみじみと言う。夜の仕事で苦労をして、税金をたっぷり払っても、なんとかビザを更新して、日本で働きたい。

「はい、日本にいたいです」

 ユラさんもはっきり言う。ここで家族のためにもっともっと稼ぎたい。だからユラさんは、店が休業している間はずっと日本語の勉強をしていたそうだ。すでに達者な会話力はあるように思ったが、

「将来的に、日本でなにかをやってみたくて。それがなんなのかまだわからないけど、日本語はもっと勉強しないと」

 なんて言う。

 それに、これを機に介護の仕事を始めたフィリピンパブ嬢がかなり多いのだという。ユラさんの店でも、半分くらいの女の子が介護をしているそうだ。昼間はデイサービスで働いて、夕方5時で終わってから、店へとやってくる。お客が減ってパブの稼ぎは少ないが、ダブルワークでなんとか暮らしているというわけだ。

 いま介護の世界でも外国人が急増しているが、フィリピン人はとくに多い。夜の世界との掛け持ちもいれば、日本人と結婚した主婦もいる。技能実習生や、2019年から新設された「特定技能」という在留資格の枠組みの中で、介護の仕事をするフィリピン人もいる。親を大切にし、年寄りを敬うフィリピン人の気質は、介護にあっているのかもしれない。昼も夜も、日本人の面倒を見るのである。

ルポ コロナ禍の移民たち

室橋 裕和

明石書店

2021年12月31日 発売

「ひと月に20万円、送ったことあるよ」コロナ禍で店が閉店…フィリピンへの仕送りに困ったパブ嬢たちの最終手段“ウータン”とは

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