高齢でもあり、肝臓と前頭葉をむしばまれていました。そこに病巣があるとお医者さんが判断されたのだから、家人(妻)は手術ができないかと悩んでいましたが、私は「こんな小動物の臓腑にしても、脳の中にしても、人間ですら大変な手術なのに、この犬の身体(体調)がもつとは思えんナ。先生もここまで懸命にやって下さったんだ。当人(犬をこう呼ぶのも変ですが)も懸命に耐えて来たんだ。これ以上負担のかかる療法はよした方が犬のためだ」と言いました。
私の考えが正しいとは思いませんが、これまで3匹の犬が治療を続けながら寿命をまっとうしてくれました。それぞれ厄介な時期もありましたが、獣医の先生を疑ったり、批難することは1度もありませんでした。
なぜか? 私は我が家の犬の担当医の顔と病院の様子(たとえば看護師さんたちの表情)を必ず見に行きます。
――大丈夫だ、この先生は、看護師さんたちはベストを尽くしてくれている……。
そう思えたら、ひと安心しています。
あなたはベストを尽くした。他に何が必要ですか?
それは医者の世界ですから、医師としての技量の高い、低い、経験値の差もあるでしょう。しかしせっかく自分と自分の犬が出逢った先生だ。信じて、看てもらうのが、人と犬の道でしょう。
女史先生? あなたはベストを尽くして、結果、手術をやり直さねばならなかっただけです。誰にだって同じ、失敗や、運の悪かった状況はあるはずです。
先生が、我が家のペットに、この仔を元気な姿に戻してあげよう、1日でも長く生きて欲しいと思っていらっしゃるのなら、他に何が必要ですか?
失敗をなさったことで、先生は、その手術のエキスパートになられるはずです。いいですか? 悪い方に物事を考えちゃダメです。いちいち失敗を口にしてはダメです(だって怖くて預けられないでしょうが……)。
先生、頑張りましょう。まだ42歳だ。きっと素晴らしい獣医師さんになられます。頑張って下さい。