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酔っ払いに絡まれる女性をすぐに助けられず…悔やみ続ける男性に「わしは、君を誉めたい」と伝えた作家・伊集院静の“真意”とは?

『大人への手順』より #1

2022/04/23

source : 文藝出版局

genre : ライフ, 人生相談, ライフスタイル, 読書

note

同じことを、君の子供や、他の子供にしてあげればいい

 人間は生きている時に受けた恩は、恩を下さった人に、お礼をできることはめったにないのです。

 淋しい話に聞こえるかもしれませんが、それが世の中というものです。

 では、どうすればいいか?

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 それは、その人が受けた恩と同じようなものを誰かにしてあげれば、それでイイのです。

 君だったら、大人になり、子の親になった時、ご両親のして下さったことと同類のものを、君の子供や、他の子供にしてあげればいいのです。

 そうやって数珠(じゅず)がつながっているように、人間はくり返して生きて行くのです。

 それが、お金では買えない、人間の誠実です。

©文藝春秋

酔っぱらいにからまれている女性を目撃した男性の行動

先日、酔っぱらいにからまれている女性がいて、すぐに間に入ろうと思ったのですが、体が動きませんでした。自分がからまれたらどうしようと思ってしまいました。他にも理不尽なことを目にしても咄嗟に手が差し伸べられず、見て見ぬふりをしてしまうことがあります。見て見ぬふりをしないようにするには、どうすればいいでしょうか。(31歳・男・会社員)

 31歳のサラリーマン君。そうですか。酔っ払いにからまれていた女性を見て、咄嗟に酔っ払いと女性の間に割って入ろうとしたのかね。君はなかなかの正義漢だね。いや、その気持ちが湧くだけで、わしは、君は偉い! と思うよ。君のような勇気のある男が1人でも、2人でも増えれば、世の中はもっと暮らし易くなるんだけどナ。

 それで何だって?

 すぐに行動をしようと思ったんだが、意志とは逆に、身体が動かなかった?

 その酔っ払いに、自分がからまれたらどうしようと心配になって、身体がかたまったのかね。

 いや、君は正直でヨロシイ。

 動かない身体を無理に動かして、相手ととっ組み合いになったら、たぶん君は怪我をしただろう。

 動かずじまいだった君を、意気地無しと呼ぶ人なんかいないよ。

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