2020年の調査(「ジェクス」ジャパン・セックスサーベイ)によると、恋人や結婚相手以外の人とセックスをしている性交経験者の割合は男性が4割強、女性が3割強だという。この割合を高いととるか、低いととるかは人それぞれだが、浮気・不倫をする人が一定の割合で存在することは確かだ。

 なぜ、世の中には浮気・不倫をする人とそうでない人がいるのか。脳科学者の中野信子氏は、その要因には脳内物質が深く関係していると語る。ここでは、中野氏と国際政治学者の三浦瑠麗氏が「不倫」をテーマに対談した『不倫と正義』(新潮社)の一部を抜粋し、浮気・不倫に積極的な人の特徴についての意見を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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性行動を分ける2つの脳のタイプ

三浦 中野さんはすでに不倫で1冊本を書いてらっしゃいますよね(『不倫』、文春新書、2018)。人はなんで不倫をするんですか?

中野 詳細はそちらの本に譲りますけど、前提としてまず申し上げておきたいのは、一夫一妻型の種って哺乳類では3~5%とされているんですね。そもそも圧倒的に少数派なんです。その上、多くの人が誤解していると思いますが、人間は生物としては一夫一妻型ではないんです。一定の発情期もないから、いつでもパートナーを探すことができる。そして、同時に複数のパートナーを持つことが可能な脳を持っている。一夫一妻型の種ではそれができません。

 人間が、決まったパートナー以外のパートナーを探すという仕組みに関しては、複数の遺伝的な素質が関わっているので一概には言いにくいんですけれど、ある脳内物質に注目して、複数のパートナーに目移りしやすいタイプか、そうでないかの2つのグループに分けてみると、大体その割合は半々ぐらいになるみたいですね。

三浦 ある脳内物質。

中野 アルギニンバソプレシン(AVP)という物質なんですが、脳内ホルモンの一種であるバソプレシンにアルギニンというアミノ酸がくっついたものです。バソプレシンは血管を収縮させて血圧を上げる作用や利尿を抑える作用などで知られていますね。このAVPはオキシトシンという「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内物質に非常によく似た構造を持っています。恋人や親子同士の安心感をもたらしたり、不安を減らす働きがあるオキシトシンに対して、バソプレシンは親切心を高めたり、特に男性においては女性や家族に対する親近感や愛情を高めるとされています。

 このAVPの受容体のタイプによって、性行動に違いが出てくることが知られているんです。1人のパートナーといるのが心地よいタイプなのか、それともたくさんの人と薄く浅く関係を結ぶのが心地よいタイプなのか。後者はまあ「稼ぐ人」ですよ。

三浦 「稼ぐ人」とは?

中野 遺伝的な要素も関わってきます。ある遺伝子を持っているタイプの人では、未婚率、離婚率、不倫率が高くなる。この遺伝子の持ち主は、身内にはやや冷たい行動を取りがちになるためではないかと考えられています。一方で、外づらはいい。そのため、社会経済的地位も上がりやすくなる。で、「よく稼ぐ」です。1人にこだわる気持ちが薄いからか、人脈を形成するのも得意で、その場限りの雰囲気を作るのも上手です。

 そういう人を夫に選ぶことは特段に悪い選択じゃないと思うんですけど、今の不倫を叩く風潮からすると、世の中の人はあまり稼がず、貞淑な夫を望んでいるんですかね。よく稼ぎ、よくばらまく人もいて別にいいんじゃないのと思うのですけど。