時代が進むにつれて「家族」のかたちは多様化している。一方で、日本の結婚に関する制度は、同性婚に関する問題や子育て支援の煩雑さをはじめ、いまだ課題が山積みだ。そもそも「結婚」とはいったいどのような目的のもと定められているのか、そして、日本の制度は諸外国に比べてどのような違いがあるのか。
ここでは、脳科学者の中野信子氏と国際政治学者の三浦瑠麗氏の対談をまとめた『不倫と正義』(新潮社)の一部を抜粋。脳科学や政治の観点から、日本における結婚・家族制度の特徴に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)
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日本の結婚制度、うまくいってる?
中野 今も同性婚の問題とか出てきていますけど、既に結婚しなくても、経済力のある女性なら子供がつくれる、1人で育てられる。そういう状態が社会的なインフラとしては整いつつあるでしょ? もちろん2人でも何ともならない層というのもあるわけですけれども。
三浦 そうですね。
中野 そう考えると、じゃ、仕組みとして結婚というのはどうかというと、何かちょっと間尺に合わない感がある。そもそも結婚って、財産の散逸を防ぐとか、あとは人口の管理とか、そういうことのために国家が行ってきたものなのかなという前提があったとすると、もうあまりその役に立ってないですよね。
三浦 つまり、社会に子供を増やしたいと思ったとき、結婚を守るより結婚を解体した方が、いいかもしれないということ?
中野 既にフランスがそれで成功していますし、恐らく日本的な結婚制度というのがあった方が人口が減ることになるんだと思います。フランスにPACSってありますよね? 「同棲以上、結婚未満」みたいな制度。民事連帯契約って訳すみたいですけど、同性または異性の成人2名による、共同生活を結ぶための契約。
三浦 日本で言う事実婚を法的に保障した制度ですよね。同性婚も簡単にでき、扶養義務や救護義務はあるなどほぼ結婚と同等だけれど、法定相続の遺留分がなかったり、共同で養子縁組はできなかったり、差もある。
中野 フランスだとこのPACSも含めた婚外子の割合って、半分を超えているんですよね。それを考えると、結婚があった方が国力を削いでいるんじゃないかっていう印象がある。
三浦 日本は、婚外子というのは事実上存在することを認めた上で、親の罪は子供の罪ではないからという形で相続分を平等にしたんですよね。2013年の民法改正で。でも、これって、要は罪としている時点でね……。婚外子を罪の結果としてみるカソリックが優勢を占めるフランスでさえ、婚外子の平等は1972年には実現しているのですけど。
中野 罪というか、罪とされているというか。
三浦 相続の安定性と、子供を増やすことってまったく違うロジックなんですよね。子供を増やすという観点からは、おっしゃるとおりPACSを導入したらいい。フランスは各国と比べて、ベビーシッターや保育ママのような制度による支援が圧倒的に充実しているんです。確かに教育とか保育に関してはスウェーデンは手厚いし、北欧諸国は概ね手厚い傾向にありますけど、ベビーシッターや産後すぐの家事の補助、母体の回復支援などで比較すると、もうずば抜けているんですよね、フランスは。