中野 そこはもう瑠麗さんのほうが詳しいですね。私は粗っぽくしか知らないですけど、お母さんの体って、出産によって変化するから大変。その変化したママの体を女の体に戻すって言えばいいですかね、そうするためのマッサージやトレーニングやらが健康保険で出るの、フランスって。
三浦 すごいですよね。
中野 女であること、要するに妻として魅力的であることを国がサポートするというわけよね。それで次の子供も頑張ってねということなのかどうかは知らないけれども、そこをすごく重視している。これは特筆すべきで、日本が、じゃ、それできるかなというと、ちょっとどうなんだろう。お母さんだけずるいとかって男の人が怒りそうな気もするし、いろいろお国柄はあるから、そこは一律にフランスを真似すりゃいいということでもないと思うんですけど、こういう国もあるというのはもっと皆さんに知っておいてもらってもいいのかなと思うんですね、という補足でした。
意外と多い日本の子育て支援金
三浦 そこの柔軟な発想は本当にうらやましい。でも日本も意外に支援金が多いんですよ。あまり知られていないのですが。ベビーシッターを頼むと1日4400円分、企業主導型のベビーシッター補助制度で出るんです。中小企業だと企業負担分が1チケット当たり70円。余裕のある中小企業なら生産性向上のために払うでしょう。大企業は福利厚生の一環で当然やっている。しっかりした企業に就職している人であれば、使える制度です。
中野 けっこうな額だよね。
三浦 1日4400円、月に24枚(1枚2200円)まで使えるのですが、全部シッターさんを頼んだとして5万2800円でしょ。年額で63万3600円。実はけっこうな金額を支給されているわけです。コロナ特例では休校の場合にフリーランスの人も対象になり、使用可能枚数も引き上げられた。日本の全体的な支援をみると、各国対比で遜色ない、かなりの支援が行われているという印象です。まあフランスは別格ですけど。
だけど、1つ大きな問題をあげるとすれば、日本における子育て支援が、だいたいにおいて福祉の発想に基づいていること。ものすごく煩雑な手続が必要だし、中野さんがおっしゃったようなママの体を女の体に戻すための支援みたいな発想が一切ないのは、そういうところに起因するんですよね。「かわいそうな人に対する福祉」の発想を抜け出ていない。
中野 そうなんだよね。またそういうふうにしないとお金を出しにくいという行政の事情も日本人のメンタリティーに由来してる面がある。ゼロなものをプラスにするために税金を使えないという感覚ですよね。マイナスの人を何とかゼロ以上にしようとかというのはあるんですけど……例えば「税金で得をしている」とかとなっちゃうと、もうその人が袋だたきに遭うのが目に見えている。だからやりにくいみたいなんですよね。