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中野 仕事で充分ハラハラしているのに! みたいなことね。

三浦 はい。金(カネ)と色(イロ)は同列で語られがちです。ストリップダンサーたちを描いたクライムサスペンス映画『ハスラーズ』のように、よくウォール街の金融マンのイメージが語られますけど、金融に携わる人々もさまざまです。例えば、2012年の大統領選に出たミット・ロムニーさん。彼なんかはベインキャピタルという世界的なプライベート・エクイティ・ファンドの創業者のひとりですけど、すごいお行儀のよい方ですよね。子だくさんで、信仰心の篤いモルモン教徒で、私生活でリスクテイクする人では全くないですよね。非常に倫理的だし。

中野 そうなんだ。

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三浦 ロムニーさんみたいに、おそらく家庭でも、その他の人間関係でもリスクテイクはしないけれど、投資ではリスクテイクをするという人たちっているわけですよね。先ほどの『ハスラーズ』は、ストリッパーに群がり、彼女たちを踏みにじって欲望のままに生きる男たちを利用し、大金を奪おうとする女たちの物語。だけど、そういう、仕事でも私生活でもリスクを求めるような人って実は一部ではないかって気もするんです。

奥さんの不満度が非常に高くなりやすい脳のタイプ

中野 「ばらまく人」は「稼ぐ人」でありうるけど、「稼ぐ人」がすなわち「ばらまく人」とは言いづらいんではないかということですよね。性行動に関する遺伝的資質が1種類じゃないというのが問題を複雑にしているんですが、さっき言ったように、ドーパミンの要求量が多分経済力と相当関係あるところだと思うんですね。いわゆる新奇探索性。もう1つ、パートナーに対して誠実であるかどうかに関係するAVP。これは人との絆を作るオキシトシンという脳内ホルモンとペプチドの数が同じで、すごく化学構造が似てるんですけど、その中で2個だけアミノ酸の種類が違うんです。

 そのAVPの受容体で、人間の場合、百五十何番目だったかな、1ヶ所だけ遺伝子の塩基配列が変異してるレセプターを持っている人がいるんですね。このタイプの人は、浮気行動をとるんだけれども、同時に、人に親切でなくなるんですよ。

三浦 へえ。

中野 このAVPをうまく受け取れないタイプの脳の人は、3つの特徴があって、未婚率が高い、結婚しても離婚率が高い、結婚が続いても、奥さんの不満度が非常に高くなりやすい。この人たちは、だから、パートナーを持つ生活に向いてないということなんでしょうね。