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 事件当日、18時半に帰宅した星島は、自室の玄関に体育座りをして耳をすまし、“916号室の女性”の帰宅を待った。靴音がしないよう、靴は履いていなかった。そして約1時間後、玄関ドアの開く音を確認すると、自室のドアを素早く開けて916号室に押し入ったのである。

一連の事件の始まりとなるAさんの異変

「顔をきちんと見たのはこれが最初で最後でした。『嫌だ』とか『キャー』とか叫んでいました。声はとても大きかった……予想していなかったので、比べようがないが、とにかく大きい声。そして私を押し出そうとしてもみ合いになりました」

 “思わぬ抵抗”を受けたことで、星島はAさんを殴りつける。この時の血が、部屋に残されていた。のちにAさんの姉が見つけたものだ。殴りつけただけでなく目隠しをしたうえ、916号室の包丁で脅し、抵抗を封じた。自室に連れ去る際「脅迫に使えるかも」と、Aさんの持っていたバッグも一緒に持ち去った。

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 星島の部屋に連れて来られたAさんは、さらに口にタオルを押し込まれ、ビニール紐で手足を縛られた。星島はAさんのバッグから携帯電話を取り出し、バッテリーを抜いたが、ここでようやく、目隠しで鼻まで覆っていたことからAさんが苦しそうにしていることに気づいた。そしてもうひとつ、一連の事件の始まりとなるAさんの異変に気づく。

自分のものにすることができないと…

「左のおでこが、大きな傷口になっていました。3センチくらい……出血していました。最初に考えたのは、痛がってるんだと。それと、このように怪我をしてしまったことで、月曜に帰すことが簡単にできなくなったと思いました」

 血痕が残っているのではと慌てて918号室を出ると、廊下にAさんの血が落ちていた。916号室に入ると、自分の足跡とAさんの血の痕を見つけた。これらを拭き取り、また自分が触ったドアノブなどの指紋も拭き取って自室に戻ったが、星島は計画通りに物事が進んでいないことに激しい不安を感じていた。

検察官「月曜の朝まで監禁して強姦することが計画でしたよね。実際の状況はどう違いましたか?」

星島「激しい抵抗にあい……怪我をさせてしまい、とても強姦する気持ちになれませんでした。怪我を見て、自分のものにすることができないと……Aさんを気持ち良くさせることができないと思いました」

 裸の写真を撮影して脅迫に使おうと思うも、デジカメを持っていなかった。仮に脅迫がうまくいったとしても、怪我の痕が残ることで不審に思われ、いつか自分のしたAさんへの行為が明るみに出る。そんな不安から勃起もせず、無理矢理Aさんを襲うこともできない。AVを観ても状況は変わらなかった。こう着状態の22時20分頃、部屋のドアを叩く音がした。Aさんの姉からの通報を受け、警察が来たのだ。

――後編では、警察が部屋を訪ねたときの星島の対応や、Aさんが語っていた将来の夢について、公判を振り返る。