日本電産は21日、永守重信会長(77)が関潤社長(60)に代わり、最高経営責任者(CEO)に就任する人事を発表した。昨年6月にCEOを引き継いだ関社長は、最高執行責任者(COO)に“降格”となった。
「週刊文春」は2カ月前、関氏の「危うい状況」を報じていた。永守会長が関氏のどこに不満があったのか、最大の“経営リスク”を報じた記事を公開する。(初出:週刊文春 2022年2月10日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
◆◆◆
関潤社長に不満顔だった
日本電産が1月26日に発表した昨年4〜12月期の連結決算は、営業利益が前年同期比17%増の1346億円。3年ぶりに過去最高を更新した。だが、創業者の永守重信会長(77)の表情は冴えない。次世代の主力と期待する車載事業の業績が悪化しているためだ。不満の矛先は関潤社長(60)に向かっている。
「日産自動車の副COOだった関氏は20年1月、日本電産に“電撃移籍”。同年4月に社長に就任しました」(取引銀行幹部)
昨年6月からはCEOを兼務。永守氏も「経営手法も(自分と)似ており、決断力や人格もCEOの後継者に相応しい」と太鼓判を押していたはずだった。
「昨年7月の決算会見で関氏は、30年度に売上高10兆円を目指す経営計画を公表。永守氏は『次回は来ません』と関氏に任せる考えを示していました。ところが10月の決算会見には現れ、記者との質疑に応じていた。一方の関氏は黙り込んでいました」(経済部記者)
この間、車載事業は悪化の一途を辿る。営業利益率で見た場合、昨年1〜3月期は7.3%だったのに対し、昨年10〜12月期には2.4%まで低下した。
「関は経営力が低い」
最近、永守氏はこんな見解を示し、自ら車載事業を仕切る意向だという。
「永守氏は日本電産を一代で売上高1兆6000億円企業に成長させました。今も同社の第2位の大株主(約8.3%)で、推定資産は約5000億円。その経営手腕は高く評価されている反面、後継者問題が燻り続けています」(前出・記者)
14年にはシャープで社長・会長を歴任した片山幹雄氏を招聘し、副社長に起用した。一時は永守氏の後継者候補と見られていたが、昨年10月に退任している。
さらに、15年には日産自動車幹部の吉本浩之氏をヘッドハンティングした。18年6月に社長に昇格させる一方、自身も会長に座ったまま「集団指導体制」に移行。ところが永守氏は「意思決定が遅くなった。創業以来、最大の失敗」として、移行から約2年でワントップ体制に後戻りさせた。