『金田一少年』初代ヒロインに抜擢、重圧から拒食症を患い…
『金田一少年の事件簿』は高校入学とともに最初のスペシャルドラマが放送され、以後、連続ドラマに劇場版にと、高校3年間まるまる出演することになる。主演の堂本剛をはじめ出演者は同年代が中心で、当時のインタビューを読むと、現場の和気あいあいとした様子が伝わってくる。
だが、一方で、パブリックイメージが独り歩きを始め、彼女自身がついていけない状態に陥っていた。イメージを壊さないよう、みんなが求める「ともさかりえ」を忠実に表現しているうち、ついには心の安定を保てなくなり、拒食症になってしまう。
『金田一少年~』の第2シリーズに出演していた高校2年のときには、撮影中に虫歯が痛み出してスタジオ近くの歯科に駆け込んだところ、免疫力がよっぽど落ちていたのだろう、治療した箇所から黴菌が入って顔が腫れあがってしまった。撮影を中断し、病院で検査してもらうと、栄養失調や貧血などさんざんな結果が出て、即入院となる。
入院中に考えた、俳優としての将来
入院中は仕事のことは考えないようにしようと思ったのだが、テレビをつけると自分が映っていた。それまでの彼女は、周囲の人たちのために動いているという意識が強く、つらくてもみんなに迷惑をかけてはいけないと自分に鞭打ってきた。だが、テレビの画面を通して、一見元気そうな顔をした自分を見て、《これじゃいけない。人のためじゃない、私のためにやらなきゃ意味がないじゃないか》、《そのためには、まず体を治して、ちゃんと元気にならなきゃいけない》と思い直したという(※2)。すると病院の食事も心からおいしいと感じられるようになった。
2週間ほどの入院中にはいろんなことを考え、いま自分が優先させなくてはいけないのは何よりも仕事だと思いいたる。俳優として立ちたいという思いが彼女の心のなかに芽生えた瞬間だった。
20歳になる直前には、つかこうへい作の舞台『犬を使う女』(1999年)に主演する。映像の世界でやっと自分なりにペースをつかめた頃で、ここで環境がまったく違う舞台をやるのには躊躇もあった。だが、ドラマでの表現にはある種の限界があるのに対し、舞台は果てしない世界のような気がして、不安ながらやってみようと思い立つ。