北海道を舞台に、ロシア軍と日本の自衛隊の地上戦を描いた『小隊』。一小隊長を主人公に、突然始まる戦闘と壊れる日常を描写した作者の砂川文次氏は、元自衛官の芥川賞作家として注目を集めている。砂川さんが元陸上自衛隊航空科という経歴からどのようにウクライナ侵攻を見ているのか、話を聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)
テクノロジーの効果については懐疑的
――当初、欧米はロシアを逆なでしないように、ウクライナへの軍事支援に対して及び腰でした。しかし、直近では大量の武器・軍事支援がウクライナに届けられています。米バイデン大統領はウクライナに対して新たに8億ドルもの軍事支援を行うと表明し、ウクライナで活躍しているドローン(スイッチ・ブレード)の進化版秘密兵器「フェニックス・ゴースト」を供与するとも発表しました。ロシアは、欧米の最新鋭の軍事テクノロジーと戦うことになります。
砂川 テクノロジーの効果については、私は懐疑的なんです。どれほど新しい兵器が投入されようとも、仮にロシアがいかなる損害を受けても、ウクライナのどこかの地域に執着するという場合、作戦正面にそういう新技術を投射するだけでなく、根本的に相手方の意思を挫く、別の方法を考えなければならないと思います。
結局、戦争とは「敵と我がぶつかったときに、お互いの意思を強要し合う」ということなので、テクノロジーによってのみ敵対者の意思を破砕するのには限界があると私は考えています。
――戦場の兵士の意思によって、戦いに終止符が打たれることはあるのでしょうか。
砂川 正規軍の衝突、という意味でいえば、単純に数の大小に落ち着いてくるとは思います。ただ、双方ともに、個人や少人数で戦闘に加入してくる、ということも十分考えられます。そういう意味では、戦いは延々と続くことになるのではないでしょうか。
実際、東部での戦闘は2014年から続いてきたわけで、今後、この戦いの余波がウクライナの中で収まるのか、あるいはヨーロッパ全体にまで闘争として広がっていくのか、未知数ですよね。