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バチバチに世界観がぶつかり合っている世の中で

 世界観の衝突ないしは破壊って、思想界では昔から大きなテーマの一つだと思っていて、例えばキリスト教もそうですし、他にもそれまでその世界の中で説得力を持っていた、あるいは大勢の指針となっていた価値観が、産業革命とか他の文明や世界や領域からもたらされる価値観によって破壊されて、それまでの道標を見失って路頭に迷い、不安にさいなまれる個人っていうのはこれまでの歴史の中で確かにあったわけで、そういう意味では古い問題ですよね。そのときどうすべきかは、個々人で考えるしかないんですが……。

 手掛かりは、歴史の中にあって、安全保障などとは全く関係ないところに転がっていたりするのかなと思いますね。自分達の世界観の中に入り込むというより、むしろ積極的に混ぜ合わせていくとか。

 

 このウクライナ侵攻は、ハイブリッド戦争(正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせる軍事戦略)として、いろいろな単語で表現されます。これからはバチバチに世界観がぶつかり合っている世の中で、個人に対してなされるハイブリッド戦争を、個人のハイブリッド戦略で戦っていかないといけないのかなあ、と。

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今の興味はアフガニスタン情勢

――国際情勢という意味で、今、最も興味を持っていることは何ですか。

砂川 私はひねくれものなので(笑)、むしろ今、多くの人の視線が向いていないところに興味があります。たとえば一昨年くらいまで、世界の関心事は非国家主体やテロリスト、端的に言うとイラクやアフガニスタンでした。そのアフガニスタンで、2021年に米軍が撤退するや否や政権がひっくり返ってしまった。このことは今後、重要になると思っています。

 これは、米欧型の自由民主主義陣営の紛うことなき敗北ですよね。20年も占領して、軍隊も政権も作りました、と言っていたのに、米軍が撤退した途端、一瞬にしてなくなってしまった。

砂川さんが国際情勢でいま興味を持つ現象は?

 自分達が所属している陣営の世界観・価値観の普及は、第二次世界大戦が終結して以来、対テロ戦においては重要なテーマでした。しかし、崩壊後のソ連や、東南アジアやアフリカ、東欧では、少数民族の虐殺が起こっている。これに対して欧米は、国連や多国籍軍で介入をして地域に安定をもたらす、という姿勢を取ってきました。

 これまでも国際社会による数々の国家建設、平和構築にはその成功例、失敗例があるわけですが、今回のアフガニスタンの例は、「世界観」という視点から見た場合、これまで歴史上にあった国家建設の失敗とは、少し意味合いが違うのではないかな、と考えています。

(撮影:深野未季/文藝春秋)

小隊 (文春文庫 す 27-1)

砂川 文次

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