突然のロシア軍侵攻とそれに続く膠着状態。だが、膠着状態を破り、防御陣地に接近するロシア軍。21世紀の今、現代兵器による凄惨な戦闘が幕を開けようとしている。これはウクライナの話ではない。舞台は日本で北海道、ロシア軍を迎え撃つのは自衛隊だ。
自衛隊とロシア軍の凄惨な地上戦を一小隊長の視点から描き、話題となった『小隊』。作者の砂川文次氏は、元自衛官の芥川賞作家として注目を集めている。
ロシアが日本への武力行使を昨年夏に検討していたという、ロシア連邦保安庁将校を名乗る内部告発が報道されるなど、武力侵攻は日本にとっても決して他人事ではない。今の戦争に何を思うのか、砂川氏に話をうかがった。(全2回の2回目。前編を読む)
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ロシアによるウクライナ侵攻
――芥川賞の受賞に加えて、『小隊』が文庫化を控えている時に、ロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まって、作中の内容が場所を変えて実現する形になりましたね。予見ではないと先程仰ってましたが、何か感じることはありますか?
砂川 そう言われると複雑なんですが、さっき言ったシンクタンクとか、それ以外のところでも言っていた人たちは絶対にいたし、なんならもっと詳しく予見できた人って、どこかで埋もれていたり発表していたりしているんだろうなと思います。
今回の事象や作品とは別に、「これからは個人の時代になる」「個人にシフトしていく」みたいな言説がありました。ところが、今回の戦争で国家中心主義みたいなのがわっと出てきて、そういうのを押しつぶした感じがしています。