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「敗者にも光を当てたドラマに」なぜ池井戸潤は“箱根駅伝”を描くのか

池井戸潤さんインタビュー

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 最新刊『民王 シベリアの陰謀』も発売直後から売り上げ1位を記録するなど、ベストセラー小説を書き続ける作家の池井戸潤さんが、11月4日発売の週刊文春(11月11日号)から、小説「俺たちの箱根駅伝」の連載をスタートします。

 タイトルにもあるように、今連載の舞台は「東京箱根間往復大学駅伝競走」(以下、「箱根駅伝」)。第1話は、本選の出場切符をかけた10月の予選会の場面から始まります。

 連載のスタートに際し、作品への思いを池井戸さんにお話しいただきました。

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池井戸潤さん

◆◆◆

勝者だけでなく、敗者にも光を当てたドラマにしたい

――物語は、箱根駅伝の「予選会」から始まります。主人公の所属する明誠学院大学は、かつては箱根駅伝連覇も成し遂げたほどの伝統校でしたが、ここ2年は出場すら叶わず、まずは予選会の突破を目指します。実際、10月23日に行われた第98回箱根駅伝予選会には、10校の出場権をめぐって、41チームも参加していました。

池井戸 箱根駅伝は真剣勝負である以上、ひとにぎりの勝者のほかは、すべてが敗者となる。予選会と言えど、熾烈な戦いです。各校12人を上限に出場し、各チーム上位10人の合計タイムで競い、10位までが本戦に出場できる。10位との差が、たとえ数秒の違いであっても、11位は予選敗退、そこで終わりです。一方、優勝を狙っていたのに何らかのアクシデントで下位に甘んじたチームもあるでしょう。箱根駅伝を舞台にした小説に挑むにあたって、勝者だけでなく、敗者にも光を当てたドラマにしたいと思っています。