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2022/04/15

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書

――過去のインタビューで、砂川さんが考えられている戦争というのは、1945年8月15日に終わったものだけでなくて、国家対国家以外にも差別や経済的なものもある、と仰ってましたが、今回の戦争に限らず、そういうものを含めての「怒り」なんでしょうか。

砂川 戦争って重層的ですよね。単層で起きるわけでもない。あんなスピーチしておいてなんですが、政治家が悪いとかあの国が悪いとかあの民族が悪いと片付けられる戦争って、多分一つもないでしょう。今はロシアが悪いで片付いている側面もあると思うので、一つの側面だけで語るのは自分の中で腑に落ちないところがあります。

©文藝春秋 /杉山秀樹

 『小隊』を書いている時もそういう想いがあったんで、当事者性がハッキリしている、現場とか防御陣地とか最前線みたいな場所は、ある意味で嘘にならないという想いがなんとなくありました。当事者の言葉が一番強いという想いもあるので、当事者でない自分がとやかく言うのは、好きじゃないですね。私はなんとも言えないです。

砂川文次が戦う理由

――この「戦争」についてですが、過去のインタビューでそれと戦う必要性と、ご自身も矜持とかでなく義務感で戦っていると仰ってましたね。作中でも主人公の安達は、諦めてしまった曹や幹部もいるなか、絶望的な状況でも3等陸尉という階級に伴う義務感から諦めていません。先生が戦うのは何故ですか?

©文藝春秋/杉山秀樹

砂川 私だけじゃないと思いますけど、片一方だけに寄っている自分っていないんです。自衛官だった時も親方日の丸みたいな意識が自分の中にもある反面、なにこのクソ国家みたいな気持ちを自分の生まれた国に持つ事もあって、先輩や同期にも「こんなクソみたいな作戦で何が出来るんだよ」みたいな反応もありました。自分の中にいろんな方位にいろんな考えを持っている自分がいて、結果として自分の納得いかない不正義に対抗する意識が醸成されたのかな。

 インタビューで私が言った義務感というのは、そんなに特別視されるものじゃないと思うんです。人体に備わったプロトコルとまでは言わないですけど、そういうものじゃないかと思います。

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