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“入寮日に財布を忘れた西武のドラ1左腕”隅田知一郎 故郷・長崎への愛がすごかった

文春野球コラム ペナントレース2022 共通テーマ「ふるさと」

2022/05/06
note

隅田が投げるたび、思い出す場所

 地元の人たちだけではない。

 ファンは選手たちの活躍に、ある種の希望や夢を見る。

 単純に「推し選手」の活躍を刺激に「私も頑張ろう」と思う人もいれば、例えば体の小さい選手が豪快なホームランを打てば、「体が小さくたってできるんだ」と希望を持つ子どもたちだっているだろう。

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 地方から東京に出てきた学生、これからビジネスで勝負しようという人たちにとっても、地方大学出身の隅田の活躍に勇気をもらうこともあるかもしれない。

 プロ野球選手、ひいてはスポーツとはそんな存在だ。夏の甲子園で郷土のチームが試合をしていれば自然と応援してしまう。「スポーツ」と「故郷」は、切っても切れないものだと思う。

 私自身が、富山県高岡市から出てきた「田舎もん」だ。ロッテの石川歩や西武で言えば育成4位で入団した川村啓真ら、富山県出身の選手は無条件で応援している。

 九州と北陸、地方は違えど、「故郷」を思う気持ちは隅田も私も同じだろう。そんなシンパシーを感じるのだ。

 コロナ禍で、毎年1回は必ず帰っていた実家に、3年近く帰れていない。それでも、母親の顔はいつも思い浮かぶ。距離は離れていても、ふるさとはいつも私の近くにある。

 隅田もまた、「いつでも帰れるふるさと」という感覚があるからこそ、財布をうっかり忘れてしまったのかもしれない。そう考えるのは、こじつけだろうか。

 ともあれ、隅田が投げるたびに、私は「故郷」を思い出し、「おかん元気かな」と思いをはせる。誰のどんな活躍に、何を思うかは、野球ファンそれぞれの自由である。

 そういえば、おれも大学時代、実家に財布を忘れて東京に戻ったことがあったな……。

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