昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「忍者麺」って何? BIGBOSSの背後の広告に秘められた物語

文春野球コラム ペナントレース2022 共通テーマ「ふるさと」

2022/05/06

 今回のコラムはテーマを「ふるさと」でと事前に文春野球から連絡があった。私は札幌出身。生まれた時からずっと地元で暮らしている。発信したいふるさとの自慢はたくさんあるけれど、やっぱりラーメンはかかせない。いまプロ野球ファンに全国的に注目されている札幌のラーメンが……いや、ラーメンの広告看板がある。あなたは「忍者麺~NINJAMEN~」をご存知だろうか?

 

BIGBOSSの後ろに必ず映るあれはなんなんだ?

 その広告は札幌ドームの両ベンチにある。ベンチと言っても一番端。すぐ横が裏からの通路で選手が座る場所からは離れているのでファンが目を向けることは滅多にないし、試合中継などでカメラが向くことなど去年まではほとんどなかった。今年もその広告スペースは最後まで手をあげるスポンサーはなく、開幕が近づいても売れ残っていた。

 広告代理業も手掛ける株式会社シンセンの社長・松田一伸(かずのぶ)さんは考えた。「今年は札幌ドームはファイターズにとってはラストイヤー。だったらいっそのこと自分たちで最後だけでも広告を出してみようか」と。

 札幌市東区にある松田さんの会社の事業は多岐にわたる。そのひとつにラーメン販売もあった。目立たない売れ残りのスペースと言ってもそこは札幌ドーム。決して安い金額ではない。従業員5人の会社にとっては大きな決断。

 広告看板を取り付けたのは3月27日の夜のこと。ファイターズの本拠地開幕まであと2日しかないというギリギリのタイミングだった。ほんの少しでも効果が出ればいい。松田さんはそのくらいに思っていた。その時はまだその広告がこれほど注目されるなんて誰も知らない。

 3月29日、火曜日。開幕カード、福岡でのホークス戦に全敗して迎えた本拠地開幕。来年は北広島市に新球場が開業。札幌ドームで開幕セレモニーを行うのもこれが最後だ。ファンもチームもそれぞれの思いでこの日を迎えた。

 センターバックスクリーンには、BIGBOSSが就任後にチームを船に例えたことを受けて、大掛かりな帆船をモチーフにしたセットが組まれ、スタメンを勝ち取った選手たちが誇らしげにそこに並び颯爽とグラウンドに登場。BIGBOSSはホバーバイクと呼ばれる空中浮遊する大きなドローンに乗って現れ、着地後に自らプレーボールを宣言するという期待の更に上をゆく派手なパフォーマンスとなった。

 そして、試合開始。私はHBCラジオのスタジオにいた。いつものように試合中継を聴きながらスコアを付け、試合後の番組に備えていた。時々、映像もチェックする。今年の中継はベンチがよく映る。BIGBOSSの表情もよくとらえる。

 札幌ドームはホームベンチが三塁側だ。BIGBOSSは一番左端、ベンチ前の囲いの角の部分にすっと腰を乗せてスマートに座っていた。その後ろには赤と黒の……ポスター? 初めに見た時、それはBIGBOSSの定位置のしるしとして貼り付けられているポスターのようなものかと思った。敢えてそこに飾られているものなんだろうと。ええと、なんて書いてある? BIG……ではない……NIN……JA? え? なにこれ?

 松田さんの会社で扱うラーメン「忍者麺~NINJAMEN~」の広告は、こうしてファイターズファン、プロ野球ファンの間に広まっていく。BIGBOSSの後ろに必ず映るあれはなんなんだ?と。