沙斤洞のワンルーム街の真ん中にあり、学生たちの「サランパン」の役割をしているカフェがある地上5階(地下1階)の建物の入口には34個の郵便受け、壁面には34個のガス計量器が設置されていた。それぞれのドアに書かれた号数とそれは一致していた。少なくとも34世帯が暮らしているらしいこの建物は、驚くべきことに建築物台帳には「1世帯」だけが暮らす単独住宅と近隣生活施設(※飲食店や小売業などさまざまな小規模商業施設)と記載してあった。2~4階にあると書かれている「読書室(※民間が運営する勉強部屋)」らしきもの影も形もなく、ただワンルームだけが見える。住宅を建てるためには1世帯あたりの法的駐車場空間を確保しなければいけないのだが、貴重な土地に駐車場など作りたくないのだろう、近隣生活施設として申請しておいて実際はワンルームを作るという手法だった。この建物はすでに2019年1月に建築法違反で摘発されているにもかかわらず、堂々とワンルーム賃貸業を続けていた。
ある住宅は9世帯の居住用として建築許可を受けながら、駐車場の四面までをしっかりとワンルームに改造していた。賃貸用の建物の郵便受けは管理がきちんとされていないのか、置きっぱなしの郵便物であふれていた。中国人入居者が少なくないのだろう、分別用に置かれたゴミ袋の注意書きは中国語も併記されていた。窓の隙間からはスピーカーフォンで通話している入居者の中国語が聞こえてきた。
この家も「郵便受け」は噓をついていなかった。玄関に入るとずらりと並んだ30の郵便受け。その上の電気計量器もやはり30個だった。書類上ではわずか9つの部屋なのに、それを30個に分割することで大家に入る収益は相当なものだろう。家賃が月40万ウォンとして、賃貸による収益は360万ウォンから1,200万ウォンに跳ね上がる。大学生は転入届けを出さず、年末調整もせずに税金の控除も受けない場合が多い。現金で入ってくる収益を正直に申告するような賃貸人なら、そもそも違法改造などしないだろう。
このように10世帯以上が暮らす建物(郵便受けか計量器のどちらか1つでも10個以上)は、79棟を調べてみただけで82パーセント(65棟)に及んだ。10棟中8棟が新チョッパンということになり、すでに違反建築物として摘発されているケースも28棟(35.4パーセント)になる。そしてこの65棟の大家の平均年齢は満60.5歳。1958年生まれである。「地・屋・考」に押しやられる若者だけでなく、外観上はちゃんとしたワンルームに高い家賃を払いながらも「住居貧困」の境界で暮らす若者たちがいる。
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