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「死刑判決を受けて、控訴しなかった人っていますか?」

「小野さん、これまで会った人のなかで、死刑判決を受けて、控訴しなかった人っていますか?」

「いや、いまのところいないねえ。それに、被告本人が控訴しないって意思を持っていても、弁護人が控訴しちゃうことがほとんどだから。そのあとで、本人が控訴を取り下げるって感じだよねえ」

「なんか、控訴する意味はねえなあって思ってて……。(相模原障害者施設殺傷事件の)植松さんみたいにするかなあ、と思って……」

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 植松聖(さとし)死刑囚も一審での死刑判決後、弁護人が控訴したが、本人が控訴期限内に控訴取り消しの手続きを行い、死刑が確定している。

白石隆浩死刑囚 ©文藝春秋

「いやもう、今後、大口の話とかってなさそうじゃないですか。それなら早いほうがいいなって……」

 ここで白石の言う「大口の話」とは、現金の差し入れと引き換えにやる面会のこと。

 私が、「でも、死刑が確定して家族と弁護士以外に会えなくなると、その可能性も失われるよ」と告げると、「たしかに、そうですよねえ……」と言い、憮然とした表情で口を開く。

「╳╳と╳╳が一般の人間を仕込んできたんですよ……」

 挙げたのは週刊誌2誌の名前だった。意味のわからない私に向かって彼は続ける。

「知り合いの女の子を連れてきたんですね。別々の女の子。それで手紙をくれだとか言われて、ああ、これは記事のための仕込みだとわかって断ったんです」

 つまり週刊誌2誌が、白石の知人女性2人に対して、それぞれ面会に行くように促し、彼の肉声を取ろうとしたということだ。

「(その女性たちから)手紙が来たら、どうしようかなあ? そのときは小野さんに連絡取ってもらおうかな、ははは……」

 そう言って声を上げて笑い、この話題は終わった。

 そこで私は、前回話した、1人目の被害者Aさんについて口にし、「殺害はいつ考えたの?」と質問する。