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東大と相手との差が縮まっていく「2つの理由」

 事実、浜田氏の監督在任中は、2015年に史上最長だった94連敗を止めると、2016年春には宮台康平(現・東京ヤクルトスワローズ)を擁して3勝。2017年秋には法政に対して2勝を挙げ、2002年以来となる勝ち点を挙げた。

「相手との差が縮まっていくのはなぜか? これにはふたつの理由があると思っています」

 その要素とはなんだろう。浜田氏はこう話す。

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「ひとつは実際に六大学で対戦すると、東大の選手たちが『あ、このレベルに行かなければならないんだ』と感じるわけです。相手はドラフトで指名されるような選手たちですよ。でも、同じ神宮球場で戦う以上、それが現実となる。目標設定がそこに定まるわけです。受験勉強でも一緒ですよね。東大なんて無理だと思ったら無理。でも、高校の先輩が東大に行っていれば、自分にも出来ると思える。そのことを私は『レッテルが剥がれる』と呼んでいます」

 なるほど、東大野球部の面々は甲子園を沸かせた高校球児や、将来、プロで活躍する選手たちと手合わせをすることになる。すると、必然的に自分もそのレベルに引っ張られるというわけだ。

「もうひとつ、これは野球のことになりますが、野球は試合に出ていれば上手くなります。これは間違いない。東大でレギュラーになる学生は、入学時に圧倒的な差をつけられていたはずの他大学の補欠の選手より上手くなります」

 この現象は野球に限らない。

 ラグビーでも、バスケットボールでも同じようなことが起きる。試合に出続けた選手は明らかに上達するのだ。だからこそ、強豪大学に進んだがゆえに能力が有りながらも控えに甘んじ、そこで成長が止まってしまう選手が生まれるという矛盾が起こる。

©文藝春秋

競技者としてのピークをどこに持っていくか

 それにしても、強豪とされる高校から早稲田、法政、慶応、明治、立教といった名門校に進むも神宮でプレーするチャンスが得られない選手より、「下級生から東大でレギュラーになった選手の方が大学卒業時点では上手くなっている場合が多い」というのは衝撃である。

 そんな感想を伝えると、浜田氏はこんな風に解説してくれた。

「競技者としてのピークをどこに持っていくかという問題ですよね」

 浜田氏が続ける。

「私は選手の“頂点”の高さを、『より早く』ではなく『より上へ』持っていきたいんです。仮に小学生や中学生の頃に全国大会の高いレベルを目指して追い込んでも、ジュニア期だと体の発達も未熟ですから、到達できる頂点の高さが低いわけです。それよりも高校生以降に頂点を持っていった方が、より高いところへ到達できます」

 だからこそ浜田氏は、体の成長に合わせた育成とコーチングが必要だと話す。