文春オンライン
遠征先まで6時間レンタカーを自ら運転、1年で3球団目の移籍…メジャー開幕を四番でむかえた筒香嘉智は「なぜ日本球界に戻ろうとしなかったのか」

遠征先まで6時間レンタカーを自ら運転、1年で3球団目の移籍…メジャー開幕を四番でむかえた筒香嘉智は「なぜ日本球界に戻ろうとしなかったのか」

2022/05/02
note

 物語はパイレーツへの移籍、そして再びメジャーのフィールドに立つことで帰結する。「メジャーに戻るから」と約束した筒香が、移籍初戦でヒットを放ったとき、辻󠄀本監督はこれ以上ない感動を覚えたという。

(『Road to L.A.』より)

「自分の求めるものを追求し、決して楽な方には流れようとしない。私生活もしかり、その姿勢は勉強になりますし、自分もやらなきゃなって筒香選手と話すたびに思うんです」

 辻󠄀本監督は、今もアメリカに渡りカメラ片手にキャンプから筒香を追っている。また震えるような感動の瞬間を収めたい。それができるのは自分だけだ、と。

ADVERTISEMENT

(『Road to L.A.』より)

筒香がマイナー落ちしている日々で流れたハマスタでの応援歌

 今シーズン、開幕戦で筒香はパイレーツの四番に座りマルチ安打を放つなど、ここまでチームの勝利に貢献をする働きを見せている。

「すごく充実しているという話はしていました。オフも含め、かなりいい準備ができたようですね。じつは毎年、シーズンが始まると眠れない時期があるそうなんです。オクラホマシティ時代も、朝まで寝ることができず1時間ほどの仮眠で試合や練習に出ていたということもあったようです。けど今はそんなことはないと言っていましたし、心身ともに万全な状態で試合に挑めているようです」

 現在の躍動の要因が『Road to L.A.』には色濃く映し出されている。

「まずはベイスターズファンの方々に観てもらいたいですね。昨年6月、雨でベイスターズの試合が中断した際に、スタンドから筒香選手の応援歌が流れたんです。その頃は筒香選手が負傷者リストに入っていてもがいていた時期だったので、ベイスターズファンの方々は温かいなと思ったし、あの苦しい時期、こんなこと思って過ごしていたんだよってぜひ知ってもらいたい。

©文藝春秋

 

 あとは僕自身があまり野球に詳しくないこともあって、野球を知らない人がみても『ああ、野球選手ってこんなこと思ってんだ』と興味を持ってもらえたり、筒香選手の言葉から学びを感じ取れるような映像にしようと頑張ったので、そこを楽しんでもらえたらなって」

 そう言い辻󠄀本監督は自信ありげに微笑んだ。

 自分の信念を貫くことの大切さ。困難から目をそらさず立ち向かうことの尊さ。そして人生を楽しむことの素晴らしさ――。

 筒香嘉智の歩みには、人を魅了する数多くの示唆が含まれていると言っていいだろう。

◆◆◆

 2020年、自身の夢であったメジャーリーグに挑戦した筒香嘉智選手。奮闘を続ける彼の密着ドキュメンタリー『Road to L.A.』(https://vimeo.com/ondemand/roadtola:全34分)。日本でほとんど語られることのなかった、“日本の四番”を背負った男の知られざるマイナーリーグでの日々とは……。

※プレスリリース:https://drawingandmanual.studio/roadtola
 

遠征先まで6時間レンタカーを自ら運転、1年で3球団目の移籍…メジャー開幕を四番でむかえた筒香嘉智は「なぜ日本球界に戻ろうとしなかったのか」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー