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2022/05/16

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際, 経済, 読書

 いまは例としてカニの輸入を取り上げましたが、ヨーロッパ各国のロシアとの取引で最大のものは天然ガスです。ヨーロッパの企業がロシアから天然ガスを買おうと思っても、情報のやりとりが止まってしまいます。これがロシア経済に打撃を与える経済制裁です。

 でも、これではヨーロッパの企業も天然ガスが購入できなくなるという“返り血”を浴びることになります。おそらくロシアのプーチン大統領は、天然ガスが欲しいヨーロッパの国々が、SWIFTからの追放という極限の手段には出ないと高を括っていたのではないでしょうか。SWIFTからの追放は、金融業界では「金融制裁の核爆弾」と称されてきました。それほど与える衝撃は大きいのです。欧米各国は、それだけロシアへの怒りが充満していたというわけです。

 今後、ロシアは天然ガスばかりでなく、さまざまな商品を輸出もできなくなれば輸入もできなくなります。ロシア経済はどん底に落ちることが予想されますから、ロシアの通貨ルーブルも暴落します。ルーブルが暴落したら、輸入品(輸入できたとして、ですが)の価格は高騰します。

池上彰さんが解説する、SWIFTからの追放が、ロシアやヨーロッパ各国に与える衝撃とは ©文藝春秋

 実はロシアの中央銀行は、こういう事態を予想して、外貨(つまりドル)を大量に保有していました。ドルでルーブルを買い支えるためです。ところが、ここでもロシア側に誤算がありました。ロシアの中央銀行は、持っていたドルの大半を、アメリカや日本の銀行に預金していたのですが、アメリカや日本の銀行は、ロシアの銀行のドルを凍結したのです。

 こうなると、ドルで買い支えることができませんから、ルーブルの下落に歯止めがかかりません。

 こうした制裁によって、ロシア国民は慌てて預金を引き出し、ドルに両替しようとしていますが、ロシア国内に十分なドルが存在しなくなった結果、両替ができません。ロシアの庶民は、自分の持っているルーブルの価値がどんどん下がっていくのを見ているしかありません。

 ただ、経済制裁の効果が出るには時間がかかります。ロシア軍の侵略を止める即効性はないのです。(2022年3月10日「週刊文春」掲載)

 

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