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桂田社長に覚えた“違和感”

 同社は2017年から高齢となった創業社長が経営権を4000万円で譲渡。「知床遊覧船」の社長の座についたのが、地元のホテルチェーン「しれとこ村グループ」の桂田精一氏だった。

「しれとこ村グループ」代表取締役社長・桂田精一氏(58)

 渡辺氏は、共に働くうちに桂田社長に違和感を覚えていったという。

「安全が第一な船会社なのに、社長がほとんど遊覧船の事務所に来ないんです。遊覧船の仕事をしていると思ったら、『看板をどうしよう』とか『パンフレットのデザインは』とか集客に関することばかり。船のメンテナンスなどはベテラン船長に任せきりでした」

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 だがーー。桂田氏の「人員を刷新したい」という意向で昨年3月、ベテラン船長を含む長年遊覧船事業を支えてきた計5名が会社を去っていった。新しく船長に就任したのが、今回事故を起こした船の舵を握り、依然行方不明となっている豊田徳幸氏(54)だった。

「残ったスタッフに聞くと、『豊田船長は天候が悪くても自分で港まで足を運ばず甲板員に行かせている』とぼやいていました。豊田さんは川などの経験は豊富ですが、海での操船経験はそれまでほとんどなかったとも。ベテラン船長がいなくては天候や潮の流れが複雑な知床の海はとても走れません」

 昨年6月11日に、豊田船長が出航後、約5分で事故を起こしてしまったが、

「普通事故を起こす場所ではなく、遊覧船仲間は皆『ええ~、なんで?』と首を傾げていました。豊田船長は船の業務が終わるとホテルの仕事に従事していましたので、操船技術を学ぶ時間もなかったのしれません」