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「薬を出すのにいつまで待たせるんだ!」「生活アンケートには意味があるのか?」 元薬剤師のマンガ家が明かす、“薬局”で一番多かった“理不尽な”クレーム

三浦えりかさんインタビュー#1

2022/05/12
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患者さんからの一番多いクレームは…

――薬剤師の常識が世間一般の常識ではない、ということですね。ほかに「薬剤師の常識」が通用せずに、大変だったことはありますか?

三浦 お薬を出すまでの薬剤師の手間が患者さんに伝わらないことです。患者さんからのクレームで一番多いのが「薬が出るまでの時間が長い」というものなんですが……。

 第1巻の第1話でも受付から投薬までの流れを紹介しましたが、そもそも処方箋って間違いが多いんです。ですから、薬の量や使い方が適切であるかどうかを確認する「処方監査」や、おかしいなと思った時は医師に確認をする「疑義照会」が非常に大切です。まず、ここである程度の時間がかかります。

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薬が出るまでの時間の長さには理由があって…(第1巻1話より)

 そのあとようやく薬を準備しますが、ここでも必要に応じて粉砕や混合、一包化などの作業が発生するので、さらに時間がかかります。そしてそろった薬を、間違いがないかどうかチェックする「調剤薬鑑査」という作業を経て、はじめて患者さんのお手元に届けられるんです。

 私たち薬剤師からすると、投薬までにある程度時間がかかるのは当たり前で、むしろすぐ出される薬のほうがちゃんと監査や照会をしているのかと心配なんですが、この作業が伝わらずに「いつまで待たせるんだ」「待ち時間が長い」と怒られることが多かったのは、大変でした。

――実際に薬剤師に文句を言ってくる患者さんも多いんですか?

三浦 理不尽なクレームをつけられることはしょっちゅうありましたよ。理由もなく怒鳴られたり、30分以上説教され続けたりということも、日常茶飯事でした。これで精神的に疲れてしまう薬剤師も多かったです。

 薬局で患者さんをお待たせするときは「もうすぐできます」ではなく、なぜ時間がかかっているのか、どこに時間がかかっているのかを、薬剤師が患者さんに説明することも必要です。ただ、患者さんを守るためにどんなミスも見逃すわけにはいかないので、そこは時間がかかってもわかっていただけたらと思います。

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