薬局を舞台に、「ただ薬を渡すだけじゃない」薬剤師を描いた『処方箋上のアリア』。口は悪いけれど知識豊富で洞察力も優れたキレ者薬局長・麻生葛󠄀(あそう・かずら)と、天然ボケの新米薬剤師・浜菱愛莉(はまびし・あいり)の凸凹コンビが、訪れた患者が抱えるさまざまな悩みや問題を解決していくドラマです。薬剤師として12年間現場で働いたキャリアをお持ちのマンガ家・三浦えりかさんに、薬剤師の裏事情をお聞きしました。(全2回の1回目。後編を読む)
マンガ家は無理だろうという思いもあって…
――三浦さんは薬剤師として豊富な経験をお持ちです。なぜ薬剤師でありながらマンガ家になろうと思われたのですか?
三浦えりかさん(以下、三浦) 子どもの頃からマンガ家には憧れていました。でも無理だろうなという思いもあって、現実的な道として薬剤師を選びました。
子どもの頃体が弱く、病院や薬のお世話になることが多かったので、将来は医療系に進み、自分と同じように体が弱い人の役に立ちたいと漠然と考えてはいたんです。それが高校生の時に化学の授業で物質の構造を勉強して、「OHがつくと水に溶けやすい」など、構造で物質の性質がわかるのが面白いと思い、そこから薬にも興味を持つようになりました。薬からのアプローチで患者さんを元気にできる薬剤師という職業を知ってからは、本格的に薬剤師を目指すようになりました。
――薬剤師を目指すなかで、どんなことが大変でしたか?
三浦 覚える情報の量がとにかく膨大なことです。薬の知識はもちろんですが、物理、法律、生化学や遺伝情報、あるいは川の水は何が何%になったら毒性が高まるなど、一見薬と関係なさそうなことまで広範囲にわたって勉強しなくてはいけないので、学生時代を思い出すと暗黒に呑まれたような気分になります(笑)。見慣れない単語を覚える時は語呂合わせをしたり、簡単な絵にして印象に残すようにしたりするなど、試験前は必死でした。
――大学に入学するよりも、入ってからの方が大変だったんですね。
三浦 そうですね。薬学部って、大学によっては比較的入りやすいところもあるんですけど、授業についていけずに留年したり、卒業できずに辞めていったりする割合は、多い方かもしれません。国家試験の合格率が高い大学も、卒業試験が厳しいというカラクリがあったりします(笑)。