薬局を舞台に、「ただ薬を渡すだけじゃない」薬剤師を描いた『処方箋上のアリア』。口は悪いけれど知識豊富で洞察力も優れた薬局長・麻生葛󠄀(あそう・かずら)と、天然ボケの新米薬剤師・浜菱愛莉(はまびし・あいり)のコンビが、訪れた患者が抱える悩みや問題を解決していくドラマです。作者の三浦えりかさんに、マンガの見どころについてお聞きしました。(全2回の2回目。前編を読む)
少女マンガ誌でデビューさせてもらったけれど
――三浦さんは現役薬剤師時代にマンガ家デビューされていますが、薬剤師は激務ですよね。いつマンガを描いていたのですか?
三浦えりかさん(以下、三浦) 病院勤務時代は日曜日しか休みがなかったので、マンガは夜中や日曜日に描いていました。深夜12時すぎに帰宅して、1コマだけ描いて寝る、ということもありました。その後、もっとマンガを描く時間を捻出したいと、派遣薬剤師として調剤薬局に転職したんですけど、ここでの勤務は病院とはまた違って面白かったですね。
――少女マンガ誌でデビューされた当初は、恋愛マンガを描いておられました。なぜ作風の違う『処方箋上のアリア』を描くことになったのですか?
三浦 私の絵柄に合っているからと少女マンガ誌でデビューさせてもらったんですが、「イケメンが出てきてかわいい女の子と胸キュンの恋愛をする」という少女マンガの王道を描くのがだんだん苦しくなってきたんです。それで、もともと好きだったミステリーを描きたいと青年マンガ誌にお引っ越しさせてもらいました。
――ミステリーのどんなところがお好きですか? 好きな作家や作品があれば教えてください。
三浦 ハラハラする展開や、人の深い愛情が描かれているところに魅力を感じます。昔から東野圭吾さんが好きで、なかでも『容疑者Xの献身』という作品が大好きです。
――『処方箋上のアリア』もミステリー風の要素が入っています。本格ミステリーではなく、ヒューマンドラマのなかで謎が解明していくという手法は、どうやって考えられたのですか?
三浦 実は当初は薬学生を主人公にしたサスペンスものを考えていたんです。8ヵ月もかけてストーリーを考えたのに、担当さんから「面白くない」と全ボツにされてしまい、半ば開き直って薬剤師を主人公にしたストーリーを考えたらそれがウケて、連載が決まりました。