「通常の老眼は40歳代から症状が出始めることが多い。しかし、スマホを多用していると発症年齢がグンと下がり、20~30歳代でも老眼の症状が出ることもある。これが“スマホ老眼”です」

彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類医師

 と語るのは、さいたま市北区にある、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類医師。

 ウェブ向けの原稿でスマートフォンの弊害を書くというのも野暮な話だが、スマホを使うようになってから目のピント調節に不調を感じるようになっている人は、ちょっとこの記事を読んでほしい。

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「スマホ老眼」とはその名の通り、スマホが原因で老眼と同じ症状が引き起こされている病態のこと。これを理解するには、まず「老眼」の正体を知る必要がある。

 目の角膜や瞳孔の奥には「水晶体」というレンズの役割を担っている組織がある。物を見ようとすると、その距離に応じて水晶体が厚さを変えることでピントが合うようにできている。といっても、水晶体が勝手に厚くなったり薄くなったりするわけではない。実際に動くのは、水晶体を支えている「毛様体筋」という筋肉。毛様体筋が緊張すると水晶体は厚くなり、緩むと薄くなる――という仕組みだ。

 毛様体筋は筋肉なので、年齢とともに劣化する。劣化すると水晶体の厚さを調節するのに時間がかかるようになる。さらに劣化が進むと、適度な厚さを作り出すことができなくなることもある。結果としてピントが合わせづらくなる。これが老眼の正体だ。

 毛様体筋の劣化は、特にレンズを厚くすることを難しくするため、自覚症状としては「近く」、特に手元の文字などが見づらくなる。老眼鏡が虫眼鏡に似た働きを持つのはそのためだ。

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目の内部の筋肉で「コリ」が生じる

 ではなぜ、スマホが老眼症状を引き起こすのだろう。理由は大きく三つ挙げられる。まばたきの回数が減る、目と画面の距離の近さ、そしてブルーライトによるダメージだ。

 一つ目の理由の「まばたきの回数」は、これが減ることで目の潤いが低下し、目の疲労を高めるだけでなく、ドライアイを誘発することにもつながるのでわかりやすい。

 二つ目の理由「目と画面の距離の近さ」と、三つ目の「ブルーライト」は、双方が連動して目に負担をかけようとする。

 多くの人は、スマホを見る時の目との距離が20~30センチと言われているが、この距離は、雑誌や新聞を読む時と比べて近い。近くを長く見続けていると、毛様体が過剰に緊張することになり、「コリ」が生じる。肩こりと同じことが、目の内部の筋肉でも起きているのだ。