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アドレスフリーの第三世代

 この「生まれながらの東京人」は今後、どのような行動を取るだろうか。テレワークの普及や働き方、生き方についてこの世代になると、第一世代や第二世代とはかなり異なる価値観を持っているとされる。

「東京は高コストで住みづらいし、そもそも街が無機質でつまらない」と脱出していくのか、「東京で生まれて東京で育ったから、この街を変えていこう」と新しいステージやカルチャーを築く原動力になるのか。

 まず、彼ら・彼女らは「自分たちの故郷は東京だ」と感じていない。少なくともそう感じている人はきわめて少ないといえるだろう。第二世代である私自身も東京に長く暮らしているが、住民で「ここが私の故郷です」と胸を張る人に出会ったことはほとんどない。

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 第一、第二世代の多くは何かしらのルーツを地方に持っていたのが、生まれながらの東京人である第三世代は、東京にも地方にもこだわりがないようにみえる。いわば、意識としての「アドレスフリー」だ。

“今のところ”利便性に優れている東京を拠点に

 この傾向は、最近急速に芽生えてきた「二拠点居住」「多拠点居住」の考え方につながる。第一世代はもとより第二世代の多くは、東京に拠点を構え、地方は実家に行くか、観光や旅行で訪れる先だった。ところが第三世代にとっては、東京が生活の本拠地であることに変わりはないものの、地方に対する考え方がこれまでの世代とは決定的に異なる傾向があるのだ。

 第三世代は、パソコンひとつで自由に働くことができる。そして「おもしろそうだから、地方に半年住んでみる」といった発想をする人が存在する。彼らはルーツレスゆえに、新鮮な目で好きな場所を選ぶことができる。「好きな時」に「好きな場所」で「好きなことをする」新しい考え方だ。

 彼らは東京を捨てるわけでもなく、東京に本拠を置きながら、気ままに生活の場を移していく。東京は利便性に優れているから、現時点ではベースはここに置いているが、利点がなくなれば離れていく。彼らに東京を今より住みやすい街にしようとする気はないのかもしれない。おいしいところだけ持っていく、これを英語ではチェリーピックというが、そんな価値観を持つのがこの世代の特徴だ。

 働き方の自由度が増す中、彼らがパソコンを持って地方に赴き、各地を転々として東京に戻ってこなくなった時、東京はコストも高くておもしろさも利便性もない街になったということになる。