はじめて「老いる街」になった東京
東京は実は徳川家康の江戸入府以来、はじめて「老いる街」になっている。近世に入ってから造られた江戸・東京は江戸時代を通じて、また明治維新を経て戦前から戦後の昭和・平成まで、ずっと「若い街」だった。これが転換し始めているのだ。日本史としても特筆すべきことだろう。人口構成の変化は必然であり、この変化に東京の街の機能が追いつかなくなり、さまざまな問題がこれから2030年にかけて噴出する。
東京における単身者世帯の割合は既に50%を超える。単身者世帯といえばかつては若者であったが、これからの東京は単身高齢者世帯の巣窟となる。国が呪文のように唱えてきた専業主婦と子供2人の標準世帯を見つけることは困難であり、マンガ『サザエさん』(長谷川町子作)で展開されるような、世田谷区一戸建てでの三世代の暮らし、などというものは現代ではファンタジーか時代劇だ。
こうした状況が進む東京に対して、第三世代が「故郷」とか「地元」という感情を抱くことは難しいだろう。ましてやこれから社会に登場してくる第四世代は、生まれながらにしてスマホやパソコンを手にしてきたZ世代(96年から2015年生まれ)であり、彼らの意識はむしろ、東京ではなく「世界の中の日本」に向くかもしれない。
近い未来の東京は
東京は今も再開発ラッシュの手が緩むことなく進行している。続々と立ち上がる高層ビル群の開発コンセプトを読むと、どの開発も「国際交流拠点」だの、「グローバルビジネス拠点」だのといったテンプレの文言が並ぶ。
だが経済産業省の調べでは、東京に本社機能を置く外資系企業は、欧米勢を中心として近年減少するばかりだ。東京がアジアの中心だ、と思っているのは東京第一世代と第二世代だけだ。
東京第三世代以降は、都市機能が整った東京という街の美味しいところだけを掠め取り、その時々の都合に合わせて、郊外や地方に拠点を移しながら日本国中を縦横無尽に渡り歩き始めることだろう。
すべての機能が東京に集まり、東京だけが常に発展する、この東京モデルは、生粋の東京人である第三世代以降によって崩されていくのかもしれない。新しい東京の造形が生まれるのがおそらく2030年頃を境に変質していく東京の未来だ。